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カテゴリ:茶木の音楽紀行
ケルン市内の「ウルレ門」に車を止めて直子さんは「悪いけど明日から一人で電車で
行ってくれる?本当は毎回同じ時間に登校と言う訳ではないのよ、私には仕事もある
し、主人のご飯も作らなくちゃならないし」と言って笑った。
「ケルン駅の一番端のホームから[グンマースバッハ]行きのディーゼルの汽車が出
てるからそれに乗って終点一つ前の[ディーリングハウゼン]と言う駅で降りて徒歩
10分ぐらいね、大丈夫?」
「大丈夫です」と僕は答えて車を降りた。
直子さんは去り僕はウルレ門を見上げた。
ここには5・6百年昔の物であろうと思われる城壁の一部と門があった。
町の至る所にこういった門があったがその中でもこの「ウルレ門」は有名な遺跡だそ
うだ。
そこから路面電車で10分ほどでアパートに戻ると一階の部屋の窓を一人のおばあさ
んが水で洗っていた。
僕の顔を見ると何か話し掛けて来て冷たい手で僕の頬に触れた。
それから彼女は部屋に案内してくれ、僕をテーブルに着かしてから冷凍庫からアルミ
ホイルに包んだパンを取り出し薄く切ってコーヒーを入れて「どうぞ」と言った。
「そうか、残ったパンはアルミホイルに包んで冷凍庫か」と僕は思った。
いつもパンを買って来ても一人でなかなか食べきれず一晩たつと石のようにかちこち
になってしまい困っていたのだ。
彼女は僕が話せない事など気にせず一人でべらべら話した。
話の中で自分の年は84歳だと言い、その後もしゃべり続けたがどうやらアメリカを
批判しているようだった。
アメリカと言うたび顔を顰めた。
このままでは朝まで終わりそうではなかったので話が途切れた所でおもぐろに立ち上
がり握手をして「ありがとう」と言って部屋に戻った。
その後も何度もおばあさんと顔を合わせ挨拶したが、どうやら一人暮らしのようだっ
た。  つづく





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最終更新日  2006.01.02 23:30:23
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