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テーマ:お金のない世界(611)
カテゴリ:小説
車は店長の自宅の車庫へ静かに入っていった。 そして玄関を開けると 「ただいま~」 「おかえりなさい。あれ?この子は?」 店長の息子の優希(ゆうき)君が出迎えた。 「あ~。稔君だ」 「こんばんは」 「こんばんは。君は何年生?」 「僕は小6です」 「そっか~。僕は中一よろしくね」 「こちらこそよろしくお願します」 「さ、どうぞ」 稔は居間に通された。 そこで稔は店長に質問した。 「まだお名前聞いていなかったんですけど」 「そうだね(笑)僕は大空健司よろしくね」 「僕は希望稔です。よろしくお願いします」 「お母さん。お風呂沸いてる?」 「沸いてるわよ」 「稔君、優希と一緒にお風呂にはいっておいで」 「はい」 稔と優希がお風呂から上がると食事の準備が整っ ていた。 「さあ。一緒に晩ご飯を食べよう」 「ありがとうござます。美味しそうだ」 店長は、美味しく食べながらさっきまでの経緯を 妻と子供に説明をした。 妻は半信半疑ではあったが素直な稔を見て疑いの 気持ちは薄らいでいた。 夕食が済み店長がお風呂に入っている間稔と優希 は人生ゲームをすることになった。 それは お金のことを稔に理解してもらうことだった。 「人生ゲームっておもしろそうだね」 「うん。おもしろいよ」 「これ、な~に?」 「これがお金なんだよ。でもおもちゃだけどね」 「ゲームのときだけ使うお金なんだね?」 「そうだよ。じゃあ始めるよ」 「ゲーム版の中にいろいろ書いてあるんだね」 「そうだよ。人生っていろいろお金が要るんだ」 「へ~。怪我とか病気とか入学とか結婚とかい ろんなことが書いてある。投資で儲かるとか」 「お金の要る社会はお金がないと何も出来ないん だよ。だから働いてお金を稼ぐんだよ」 「それでレストランで食べるのもお金が要るんだね」 「そうだよ」 少しずつ理解した稔はゲームを楽しんでいたが。 何度も怪我や病気をしている所に入ったものだか ら、ついに手持ちのお金が無くなってしまった。 「お金が無くなったけどゲームセットなの?」 「そうじゃないよ。借金をするんだよ」 「借金って?」 「銀行からお金を借りて、あとから利息と一緒に お金を返すんだよ」 「借金しないとゲームが出来ないの?」 「それが人生ゲームなんだよ」 「生きることと遊びと同じなんだね」 「お金がないと生きていけない社会だからね」 「なんだかお金の要る世界って辛そう」 稔はお金のない世界のほうが楽しく生きていける と真剣に思った。
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最終更新日
2020年02月25日 00時00分14秒
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