カテゴリ:イギリス看護
この間、心肺蘇生をして息を吹き返したグレン氏が退院された。
その当時は、頭部外傷でほぼ寝たきり状態に加え、飲み込みも悪く、NGチューブでのフィーディングに排尿困難で尿カテーテルも入っており、ちなみに血管性の痴呆か?と疑われるほど混乱していて社会復帰はほぼ不可能かと思われていた。あまりにもベッドからの転倒が多いので、床にマットレスを敷いて寝てもらっていたくらいだった。 しかし、グレン氏はその状況を見事に克服し、NGもカテーテルも、もちろん点滴もすべて抜け、完璧に頭も元に戻って、背筋を伸ばして自力で歩いて退院されたのだった。 久しぶりに、感動した。 彼が心肺停止から復活したときも感動したが、それとはまた違う意味で、生命の力強さを感じたケースだった。 そこまでたどり着くのに、彼は努力を全く惜しまなかった。 きっと、チューブにつながれながらも何度もベッドから飛び降りようとしたのも、きっと歩きたい、普通の生活に戻りたい、という彼の生命に対する貪欲さから来ていたのかもしれない。 それがたとえ混乱やせん妄が入っていたとしても。 グレン氏は、 「もう、戻ってこないからね」 と笑顔で退院された。 見送るスタッフの私たちに背を向けたまま、手を高々と上げて去っていった。 まるで、病棟にいたときの自分には、二度と戻りたくない、という意思を表しているかのように、後ろを振り返らずに。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005.05.31 04:43:57
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