カテゴリ:シェフの雑記帳
シャンパーニュの逸品、クリュッグの96ヴィンテージ。あまたあるシャンパーニュのメーカーの中でクリュッグはまさに特別なメーカー!というのは、、、ほとんどのシャンパーニュメーカーのプレステッジ・キュベ(最高級銘柄)つまり、モエ・エ・シャンドンならドンペリニヨン、ポメリーならキュベ・ルイーズ、ポール・ロジェならキュベ・ウインストン・チャーチルというような超一流シャンパーニュと比べると、、、クリュッグの一番安い銘柄ですら、ほとんどのメーカーのプレステッジ・キュベより高いのだ。そして、クリュグのプレステッジ・キュベであるクロ・デ・メニル(ブラン・ド・ブラン)は10数万円、最近リリースされた新銘柄クロ・ダンボネィ(ブラン・ド・ノワール)に至っては50万を超えるという化け物ぶり!最近円高でだいぶシャンパーニュも安くなっていて、無名ブランドなら¥3000を切るものもあるが、なんとその200倍近いという高値!まあ、シャンパーニュ界のロマネコンティかシャトー・ペトリュスかといったところですね。値段の話ばかりで恐縮ですが、ドンペリの10数倍もするシャンパーニュがあるんです、という話でした。 このクリュッグ96は、クリュッグが良作年にしか仕込まない特別なヴィンテージシャンパーニュで、各ヴィンテージの個性を活かして一期一会ともいうべき特別な作りのシャンパーニュに仕上げたものです。メーカーの説明によると、、、 クリュッグ1996 クリュッグのヴィンテージ・シャンパーニュは、並外れた品質のブドウが収穫できた年というだけではなく、際立った特徴と個性を表現できるとクリュッグが考える年にしかつくられません。クリュッグヴィンテージは、二度と巡り来ることのない秀作年の個性を一度限りで表現した、クリュッグの「メッセージ」といえます。シャンパーニュ地方での1996年は、凝縮とエレガンスに満ちた味わいで特徴づけられる20世紀のヴィンテージの中でも歴史に残るものとなった。クリュッグによるこのヴィンテージ年の個性の表現はまさに「非凡」という言葉で表される。ヴィンテージ1996年の夏は天候が変わりやすかった。雨が降らず好天に恵まれたが、収穫前は例年になく夜が冷え込んだ。収穫は9月20日~30日にかけて行われた。味わいクリュッグ1996は、上記のような天候のために、熟したフルーツとフレッシュさに満ち、コントラストと個性がかつて無いほど際立つヴィンテージ・シャンパーニュとなった。 濃い輝きのあるゴールド。細かな泡が絶えることなく立ち上る。ふくよかでたっぷりとした風味がフレッシュさのなかに炸裂するような印象の、一風変わったヴィンテージ・シャンパーニュ。最初は豊かなアロマ、しっかりした質感、たっぷりとして良く熟したフレーバーが感じられる。続いてドラマティックなまでに、喜びに満ちたフレッシュさが炸裂する。鼻をくすぐる新鮮な洋なしや砂糖がけのレモンのような心地よい酸味と、熟した果実やヌガーを思わせるアロマは、すでに見事な酸味と熟成感のコンビネーションを生み出している。その後、味蕾には滑らかでコクのあるハチミツやジンジャーブレッド、モカが感じられ、新鮮さが溢れるばかりの最高潮に達する。 料理は、まずアミューズに北海道の噴火湾産のボタンエビのタルタル(塩コショウとオリーヴオイルだけのシンプルな味付け)にサルディニア島産のボッタルガ(最高級の唐墨パウダー)をたっぷり振りかけたもの。続いて、生ハムとイチジクとフォアグラのパルフェ(裏ごししたフォアグラのテリーヌと軽く泡立てた生クリームを合わせコニャックで香りをつけたもの)とにかく上質な食材を使い、くちどけの良さや香りの余韻を大事にした組み合わせだ。 白ワインは、、、 パヴィヨン・ブラン・ド・シャトー・マルゴー。シャトーマルゴーが作るソービニヨン・ブラン100%の白ワイン。若いと新樽の香りが強すぎるきらいがあって料理が合わせにくい気がするが、これは89年!21年熟成だから実にバランスが良くなっていて繊細さと力強さが両立している。このワインには、あわびのリゾットを合わせた。4名のワイン会だったのでアワビも4個。2個はローストしてその肝はソースに、2個の肝はリゾットに炊き込み、身は小さめにカットしてリゾットの仕上げに混ぜる。リゾットを中央に盛り付け、ローストしてカットしたアワビを盛り付け、肝のソースを回しかけ、最後に海藻オイル(四万十川の青のりと三陸の生のりを乾燥させて細かく砕きオリーヴオイルにつけ込んだもの)をかける。ゴージャスなワインにはゴージャスな料理です。 赤ワインの1本目は、ブルゴーニュ特級、マジィ・シャンベルタン、作り手も超一流ルイ・ジャドでヴィンテージも96年と最高の年。若々しいパワフルなワインです。大地の香りと血の気を感じる鉄分の魅力。 続いて、ブルゴーニュ、ヴォーヌ・ロマネ、一級マルコンソール(ロマネコンティの隣の隣の畑)、バロン・レオン・クリストフのネゴシアンもので79年の古酒。 ブルゴーニュの2本には、フランス産の若鳩をローストして、旬のポルチーニ茸のソテーを添えた。あえてソースは使わず、ややレア目に焼きあげた鳩の血の気がソース代わりに料理を引き立て、ポルチーニの香りが古酒と呼応する。 続いて、ボルドーは先月に続いて再びシャトー・マルゴー61年!私が1歳の時のワインです。前回のものよりさらにコンディションが良く、実に深遠な味わい。合わせた料理は、子羊のロースト。それもただの肉ではなく、、、1キロほどの骨付きの子羊の背肉から300グラムくらいしかない芯の肉を取り出したもの。筋も脂も完全に取り去った赤身だけの肉。これを私得意の低温ローストでやわらかく焼き上げた。秋トリュフ風味のジャガイモのピュレを添え、はずした肉で取った出汁をあまり煮詰めずにソースとした。 子羊もここまできれいに剥いてしまうと、上品すぎて何の肉だかわからないくらいになる。低温ローストだからシルクのように滑らかな舌触りで、添えたトリュフ風味のジャガイモのピュレが古酒のニュアンスにぴったり合う。 食後酒として、貴腐ワインの王の中の王!シャトー・ディケム95年ソーテルヌ。これも1本数万から十数万する桁違いの高級ワイン!100年の熟成も可能といわれるが、若い段階でも10年熟成でも50年熟成でもどの段階でも素晴らしく美味しいのがこのワインのすごいところ。今回は95年とまだ若いので、フレッシュな果実系の香りと貴腐独特の干しブドウ的ニュアンスやアカシアなどの花とその蜂蜜の香りなどが心地よい。これに合わせて、ゴルゴンゾーラチーズとイチジクのタルト(タルトの皮に自家製のイチジクジャムを塗り、ゴルゴンゾーラチーズの薄切りを並べ、アーモンドのタルト生地を流しコアントローでマリネしたイチジクを並べて焼き上げたもの)、マルキーズショコラのレーズンコンポート添え、はちみつと牛乳のソルベのデザートを合わせた。 ソーテルヌの貴腐ワインにはロックフォールチーズを合わせるのが定番だが、ロックフォールは羊の乳なのでタルトに組み込むには少し風味が強すぎるから、ゴルゴンゾーラのピカンテ(辛口)を使った。イチジクは無花果と書くが、果実として食べる部分が花その物なのだ。つまり、ワインの花の香りを無花果とイチジクのジャムで、そこに果物ともワインとも相性が良いゴルゴンゾーラチーズを加えて、バターの利いたリッチなアーモンド生地で焼き上げるというわけ。マルキーズショコラは柔らかめでとてもコクがある生チョコ。そこに干しぶどうのコンポートをのせる。それから、はちみつと牛乳のシャーベット。ワインに合う要素が目白押しというわけで、悶絶のデザートといえるだろう。 食後は、さかもとこーひー「ボリビア・フェミニーナ」。みなさん、「このコーヒーを飲むとヴォーヌロマネの後味がよみがえってくる」と、最後の最後に盛り上がってました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Sep 16, 2010 12:43:28 PM
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