5A6ヘッドフォン・アンプ
半年以上、ブログを放置プレイしてしまったバッカス・・^^;備忘録として、また日記を書くことになりました。話は変わって、年末・年始を利用して真空管式のヘッドフォン・アンプを設計・製作してました。部品のエージングが進み、音がだいぶ落ち着いてきたのでupします。そもそもの発端は、自宅の1Fリビングにある真空管アンプの老朽化。17年も経っているから、電解コンなんかはかなりアヤシイ!!手持ち部品の残飯整理も兼ねて、ヘッドフォンも聴けるように小出力のアンプ製作と相成った。設計ポリシー1.繋げるスピーカーの能率が91dBなので、出力は1W前後2.できるだけ手持ち部品を活用する3.出力段には、今までに使ったことの無い真空管を活用してみる4.増幅回路はシンプルに済ませる出力1Wなら6V6,6F6,6BQ5の3結、71A,12BH7などでシングルが常套。でも3.の主旨に適わずパス・・。製作記事も多いしな(笑)そこで電池管なるものを登場させてみることに。ストックには5A6という電池管がある。これは携帯型無線機なんかに使われていた、乾電池でも動作するように設計された真空管だ。手持ちのTUNG-SOL発表の5A6データシートには、Vf/If 2.5V/460mA,5.0V/230mAEp max 150VEsg max 150VPp max 5wPsg max 2WIp max 40mAとなっている。プレート損失5Wなら、出力1Wは容易だろう。スピーカーの制動力の観点から、3結動作としたいところだ。だがメーカー発表のデータには、5結のデータしか無いっ!!そこで3結にして、何本かデータを取ってみることに・・。Ep=100V,Eg1=0V,Ip=55~60mAEp=150V,Eg1=-15V,Ip=25~30mA6L6の3結より若干内部抵抗が低いといったところだ。Ep=150V,Eg1=-15V,Ip=28mA,Rl=3.5kΩあたりで動作させてみるとしよう。出力はトランスの効率90%として、2次側0.6Wと見込む。36Ωのヘッドフォンに0.6Wだと、電圧では4.65Vかかっている。Eg=-15Vは実効値で10.6Vだから、出力段の増幅度は0.44倍。6dBの局部負帰還なりオーバーオールの負帰還をかけ、仕上がり利得は5倍を見込む。パワーアンプとして10倍は妥当だが、ヘッドフォンでそれは大き過ぎるだろう。ヘッドフォンなら1倍でも良いので、中間の5倍にしてみた。仕上がり利得5倍にするには、初段の増幅度は11.4倍必要。負帰還6dBかけるなら、その倍の22.8倍が初段に要求される。初段に電圧増幅用三極管を起用するとすると、μ=25~30のがちょうど良い。増幅率がこの辺の電圧増幅用真空管は、6211あたりか・・。手持ちに無いので、増幅率のやや低いμ=20の12AU7に決定。これなら5814,5963,6189WAなどと差し替えて楽しめる☆JJのECC802Sも、音質比較で試してみたい電圧増幅管である。いきなりではあるが、回路図↓出力段は固定バイアスで、シングル動作。TUNG-SOL、MAZDAの5A6データシートにはグリッド・リーク抵抗の上限値が無い。とりあえず100kΩでやってみることに。グリッド電流が流れ過ぎるようだったら、FETによるソース・フォロワを追加するとしよう。12AU7には出来るだけ電圧・電流を流したいが、供給電圧との兼ね合いからEbb=157V,Ep=100V,Ip=2.5mA,Rl=27kΩ,Ek=4Vの動作としてみる。クロストーク改善の目的から出力段には5H×1000μF、初段にはトランジスタ式のリップル・フィルタを設けた。負荷電流30mAチョイのトコに、Π型リップル・フィルタに1000μF・・。過剰投資かもしれないが、相手は効率110dBに迫るヘッドフォン。普通のアンプ設計では常識的に考えられない事を、敢えてやってみる。初段のプレート供給電源も、トランジスタを利用したリップル・フィルタで強力にサポートしている。また5A6は直熱管のため、フィラメントは定電流点火とした。要である出力トランスは何種類かの中から、春日無線のKA3250に。容量5Wで1次2k,3k、2次4,8,16Ωのユニバーサル・タイプで、バンド型のリード引き出し。インピーダンス特性も素直で、オリエントコア使用の割りに価格はお手頃♪ミニ・アンプ兼ヘッドフォン・アンプなら、この辺りがちょうど良いだろう。負帰還は出力段のプレートから初段のプレートへ、150kΩで直結。低域まで十分帰還を掛けたかったので、DCカットのコンデンサはあえて使用しなかった。初段のカソードに戻しても良いのだが、部品が増えるのでP-P帰還(P-G帰還と同じ原理)。それにP-K帰還は、音の線が細くなるような気がする。正面↓両サイドにウッド・パネルと、正面にはアルミのヘアライン加工された化粧版を付ける予定。おなじみのハラワタ・・↓回路図には初段ヒータ用の定電流点火回路が掲載されているが、実態には無い。ハムが殆ど聞こえないので、暫くは交流点火で行く予定。電源トランスからの漏洩磁束による、ごく僅かなハムがヘッドフォンから聞こえる程度。ヘッドフォンの効率が108dBなので、まずまずかな・・。電源トランスをRコアにすれば、だいぶ改善されるだろう。ジー・・とゆ整流ダイオード由来のノイズは、ヘッドフォンからも全く聞こえない。trr=400nSの中速ダイオードを使ったのだが、10年前のダイオードでもまだまだ現役だな。手元に600V8A、trr=18nSの超高速ダイオードがあるのだが、こちらは何かの機会に換えてみるとしよう。制震材のオトナシートは、要所要所で張る予定。今のままではシャシーを叩くと、ヘッドホンからカンカンと音が聞こえてしまう。シングル・アンプなので調整は至って簡単☆定電流回路の電流調整VRを回して、5A6のフィラメント電圧を5.1Vに設定。定電流回路なので電源ON直後から、フィラメント電圧がじわじわと上昇する。1時間見て5.1Vとなるようにした。0.1Vの上乗せは、エミッションup程度と思って頂ければ良い。あとは固定バイアス電源を調整し、出力管のアイドリング電流を28mAに調整。固定バイアス電源の出力は、出力管を刺す前に-20Vくらいに予め設定しておくのは、言うまでも無い。音のほうは・・。これが0.5Wのアンプとは思えないくらい、制動力の効いた低音が出る。ヴォーカルは艶やかで非常に澄み渡り、バイオリンの倍音が素晴らしい。直熱管シングルの特徴なのか、音の分離が今まで使っていた6L6の3結とは全く違う。ジャズもクラシックも、綺麗に鳴らしてくれるのがこのアンプの最大の特徴だ。真空管式のヘッドフォン・アンプは、電源トランスと出力トランスの位置による誘導ハムを最小にするのが大変。他にも電源のリップル・ノイズや真空管のマイクロフォニック・ノイズ、ヒーター&フィラメント・ハム、クロストークと、一般的なパワー・アンプとは比較にならないほど条件が厳しい。実際本機も、組み込む前に誘導ハムが最小となる配置を探した。この配置確認だけで、半日も費やしてしまったよ・・。リップル・ノイズやフィラメント・ハムは物量と半導体を利用した回路のおかげで、全く問題にならないレベルとなった。組み込みにはかなりアクロバティックな配置となったため、シャシー加工よりも時間を要してしまった。昔のコンデンサの、何とサイズの大きいことか!!今度ヘッドフォン・アンプを作るとしたら、もう少しゲインと出力を下げてプッシュプルにチャレンジしてみようと思う。今回の仕上がり利得だと、音量VR9時でちょうど良いヘッドフォンの音圧だ。サイズも今回の1/4程度で、ヘッドフォン専用。もう回路は決まっていたりする(笑)ヘッドフォン・アンプ、それは単純そうで奥の深い、大人の遊びゴコロを擽るアイテムだ。