|
カテゴリ:歌舞伎・古典、観劇
四月夜の部の演目は、「将軍江戸を去る」「勧進帳」「浮かれ心中」。
「仁玉勘」で沸き立った歌舞伎座で、夜の部をようやく観ることのできたこの日は千穐楽でした。 この四月の最終公演を1階で観ようと思っていても、チケット争奪戦においては無理な話。 せめて「勧進帳」で弁慶の飛び六方の引っ込みが観られれば、ということで手を打ったのは3階の東側でした。 舞台上手側がほとんど見えないという難点はありますが、花道がたっぷりと見渡せるこの席で、初めての観劇です。 「将軍江戸を去る」 大政奉還後の徳川最後の将軍慶喜(三津五郎)に、予定通り江戸を離れるように促す山岡鉄太郎(橋之助)。 江戸を去る最後の日、水戸へ向かう慶喜が千住大橋で感慨深く一歩を踏み出すその姿を泣きながら見送る山岡鉄太郎。 全ては新しい日本の未来のためにと願う両者の熱い想いが伝わる作品です。 「勧進帳」 弁慶に仁左衛門、義経に玉三郎、そして富樫は勘三郎という豪華な配役の作品です。 能の舞台の様式で、そのシンプルな背景に関所の場面が映えています。 こんなに大きく見える仁左衛門は初めてでしたが、主人に対する自責の念を背負った弁慶、一目で高貴さと都を落ちる儚さが伝わる義経、「武士の情け」とはこういうものかと感慨深く見た富樫。 それぞれが厳かに展開する様式の美しさの中で想いが行き交う「勧進帳」に、場内は厳粛な雰囲気に包まれていました。 幕外の弁慶には場内から「たっぷり!」の声がかかる中、大きな拍手で飛び六方の引っ込みを見送りました。 「浮かれ心中」 最後は、勘三郎の宙乗りが評判を呼んでいる、作・井上ひさし(「手鎖心中」より)、脚本・演出・小幡欣治の作品です。 絵草紙作者として名を馳せたい栄次郎(勘三郎)と太助(三津五郎)。 特に人を笑わせるためなら骨身を惜しまない栄次郎の、茶番を逆手にとった奮闘ぶりが潔い話です。 最後はネズミに乗った宙乗り=チュー乗りは、今年の干支にちなんでいるとかいないとか。 栄次郎の願いどおり、観客は最後まで笑いっぱなしでした。 そんな栄次郎を心から好いて協力を惜しまない女房のおすず(時蔵)の一途さにはホロリとさせられます。 三津五郎と勘三郎の名?迷?コンビぶりが冴え渡っていました。 次回、同じ舞台に二人が立つのは、納涼歌舞伎となりそうです。 最後に宙乗りから連日の記録的な大入りに感謝を述べる勘三郎。 「観にきてくれた人の幸せと、観に来なかった人の不幸せを願って!」なんていう一言に、またまた観にきた観客は大喜びするのでした。 そして、お祭りのように華やかな四月の歌舞伎座に幕が下りました。 (歌舞伎座にて) ☆作・井上ひさし「手鎖心中」文春文庫 ☆作・井上ひさし「手鎖心中」文芸春秋楽天ダウンロード版 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.04.28 08:50:59
[歌舞伎・古典、観劇] カテゴリの最新記事
|