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カテゴリ:短編小説
病室に入ると、私は孝史の眠っている顔を静かに眺めた…。
もうこんなに近くで顔を見るのも何十年ぶりだろう。 私はずっと孝史のことを陰ながら愛してきた。 その孝史が今目の前で、事故で危険な状態にいる。 (孝史、どうか死なないで…) すると眠っている孝史の口からうわ言が聞こえてきた。 孝史「…ゆ…」 私は咄嗟に耳をすました。すると、 孝史「ゆき…」 私は驚きを隠せなかった。 だって孝史は年をとった私の顔なんかわかるはずないし、 (きっと他のゆきって人のことだろう)そう思っていると… 孝史「ゆきなんだろ…そこにいるのは…」 由紀「!」 私は言葉が出なかった。 孝史「由紀、わかるよ…だって俺は…ぐふっ!!」 由紀「孝史?孝史どうしたの!? たかしぃぃぃいいい!!! 」 孝史は吐血し、そして死んだ。 私は泣き続けた。 由紀「いっその事、私も…」 その時、玄関のベルが鳴り響いた。 郵便配達員「こんにちは~速達で~す。」 私は現実に戻され、無意識のうちに手紙を受け取り 宛名を見ると、その手紙はなんと生前の孝史からだった! --由紀へ-- 愛してる、死ぬまで愛している。 そう決めていた人が君だ。 もうお互い年を取ってしまったけれど、 このまま年老いて死んでいく前に どうしても君に伝えたかった。 今まで、今でも、そして今からも君の幸せを心から祈っているよ。 ありがとう。 2007年10月24日 --孝史より--- それは孝史が事故を起こした 同じ日に書かれていた手紙だった… …劇終 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007年10月27日 01時43分34秒
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