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《櫻井ジャーナル》

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2012.11.26
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 日米欧は深刻な不況に陥っている。そうした中、各国政府は金融機関を救済する一方、庶民から搾り取れるだけ搾り取ろうとしてるのだが、こうした政策では不況から脱出できない。こうした意見を著名な経済学者たちが昨年、バラク・オバマ米大統領に対して説明したという。

 その経済学者たちとは、ビル・クリントン政権の時代に連邦準備制度理事会の副議長を務め、現在はプリンストン大学教授のアラン・ブラインダー、2001年にノーベル経済学賞を受賞したニューヨーク大学教授のマイケル・スペンス、IMFや連邦準備制度理事会を経てハーバード大学教授になったケネス・ロゴフを含む7名で、その多くは庶民が抱える債務を軽減することが必要だと主張したようだ。

 強者総取りの新自由主義経済の下、巨大企業の経営者や投資家は賃金を下げ、労働条件を悪化させるなどして「コスト」をカット、その一方で需要を喚起するために借金させたのである。借金で不動産を買わせ、不動産相場を引き上げて担保価値を膨らませ、新たに借金させるという一種のマルチ商法、つまり詐欺的な政策を推進したのである。サブプライム・ローン危機とは経済問題ではなく、犯罪の被害と考えるべきだろう。その被害を軽減すべきだとしたのである。

 不動産購入による負債で苦しむ庶民を助けるべきだとする経済学者の提言をオバマ政権のティモシー・ガイトナー財務長官は拒否したが、巨大金融機関の救済には積極的。マルチ商法でカモになった人びとに冷淡な姿勢を見せる一方、マルチ商法の仕掛け人には「温かい心」で接しているわけだ。さすが、キッシンジャー・アソシエイツの出身。もっとも、議会にはもっと酷い連中がうじゃうじゃいるが。

 サブプライム・ローン不動産投資の売買ではSEC(証券取引委員会)もゴールドマン・サックスと同行の重役だったフェイビリス・トゥーレには証券詐欺の疑いがあり、起訴するべきだと判断していた。トゥーレは巨大ヘッジファンドを動かしていたポールソン社と共謀し、高リスクのローンを組み込んだ商品を作り上げ、顧客へ正しい情報を提供せずに販売、10億ドル以上の損害を与えたというのである。

 アメリカ上院の調査小委員会も司法省に対し、ゴールドマン・サックスの取り引きについて調べるように求めていた。2008年に始まった金融危機の一因になった不動産投資を主導したのはゴールドマン・サックスであり、ゴールドマン・サックスの行ったことは詐欺的で反道徳的だというわけだ。

 ところが、司法省はゴールドマン・サックスや同行の社員を起訴しないと今年8月に発表している。司法省の決定を受け、法律が貧弱なのか捜査機関が貧弱だと小委員会のカール・レビン委員長が批判したのも当然だ。

 不公正な仕組みで富が偏り、一握りの富豪と多くの貧困層を生み出せば経済が破綻することはカール・マルクスでなくてもわかること。一部に滞留した資金が投機市場へ流れて「バルブ」が発生することも歴史が教えてくれる。そのバブルが早晩、破裂することも必然だ。

 貧困層の怒りを革命に結びつけたのはマルクスだが、これをファシズムで押さえ込もうとしたのが欧米の資本家。アドルフ・ヒトラーのグループを支援していたのはドイツの資本家だけではない。ウォール街から巨額の資金が流れていたことが今では明らかになっている。

 こうした危機を大企業への規制強化と労働条件の改善で乗り切ろうとしたのがフランクリン・ルーズベルトを中心とするニュー・ディーラー。1932年の大統領選挙でこのルーズベルトが当選、慌てたのがハーバート・フーバーを支援していたJPモルガンを中心とする勢力だった。このグループが反ルーズベルトのクーデターを計画、ファシズム体制の樹立を目指した。この計画は議会証言で暴露され、失敗に終わる。

 議会で証言したのはふたり。名誉勲章を二度授与された伝説的な軍人、スメドリー・バトラー少将とジャーナリストのポール・フレンチだ。バトラー少将はクーデター派に対してカウンター・クーデターを宣言していたという。当然、この証言は正式な記録として残っているのだが、学者も記者も触れる人はほとんどいない。(詳しくは拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を)

 このJPモルガンが関東大震災以降の日本に大きな影響力を持っていたことも歴史的な事実である。同行は日本の電力業界を中心に多額の資金を投入していた。つまり、日本が破綻してもらっては困る。カネがないなら、どこからか盗んでこい、と犯罪組織なら脅すだろう。その気になったところで別の人間が現れ、強盗は良くないと言いだしたらどういうことになるのか・・・。

 それはともかく、1920年代から30年代にかけて、富の集中、投機市場の肥大化、バブルの崩壊、深刻な不況ということが起こった。似た現象が現在、世界規模で起こっているのだが、当時にはなかった仕組みが今はある。ロンドンのシティ(金融街)を中心にするオフショア市場の近代的なネットワークである。このネットワークを使い、巨大多国籍企業や富豪は資産を隠し、徴税を回避している。犯罪組織が恩恵を受けていることも本ブログでは書いたことがある。

 表の経済で不況が深刻化している一方、地下経済が膨らんでいるのだが、その地下経済を支える地下銀行の仕組みも整備されてきた。監査法人の不正も露見している。巨大企業の実態を知るには「裏帳簿」を調べなければならないのだが、帳簿の裏と表の差が大きくなっているのが現在の状況。経済を健全化するためには、こうした闇経済にメスを入れる必要がある。ちなみに、闇経済の拠点がロンドンである以上、その門番はイギリスの首相だと言える。





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最終更新日  2012.11.26 18:58:12



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