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《櫻井ジャーナル》

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2016.05.01
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 すでに本ブログでも紹介したようにアメリカ政府はシリア政府の承諾を得ないまま領内に50名の特殊部隊員を潜入させていたが、4月25日にバラク・オバマ大統領は250名を増派すると発表した。近く500名体制にするとも言われている。明白な軍事侵略だ。

 戦闘員を訓練するためだというが、その戦闘員が何者なのかは明らかにされていない。最近は「自由の戦士」というタグをまた使い出しているが、アル・カイダ系の武装集団をそう呼んでいるにすぎない。

 ロビン・クック元英外相によると、アル・カイダとはCIAから軍事訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル。その大半はサラフ主義者/ワッハーブ派だと言われている。

 アル・カイダはアラビア語で「ベース」を意味し、「データベース」の訳語としても使われているようだ。なお、クックはこの指摘をした翌月、保養先のスコットランドで心臓発作に襲われて死亡した。享年59歳。

 こうした訓練はソ連軍と戦う戦闘員を育成するためのもの。1970年代終盤、ジミー・カーター政権の大統領補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーはソ連軍をアフガニスタンへ誘い込み、戦争で疲弊させるという秘密工作を始めたが、その一環だ。アフガニスタン戦争当時、つまり1980年代に西側の政府やメディアはアル・カイダ系武装集団を「自由の戦士」と呼んでいた。

 この用語をアメリカの支配層は好きなようで、第2次世界大戦が終わった頃、ウクライナやクロアチアなどでナチスに協力していた人びとをアメリカの支配層は「自由の戦士」と呼んでいた。大戦後、アメリカがナチスの元高官や大物協力者の逃走を助け、保護し、雇い入れていたことは広く知られている。「冷戦」はその原因でなく、結果だ。

 1989年2月にソ連軍はアフガニスタンから撤退、91年12月にはソ連が消滅し、アル・カイダ系武装集団は用済み。大半の戦闘員は雇い止めで職を失い、社会混乱の原因になりえる。例えば、第1次世界大戦の後、ヨーロッパから兵士が戻ってきたアメリカでは失業者が街に溢れ、ストライキやデモが続発している。

 この大戦は1918年11月に終わるが、その翌年、マサチューセッツ州ボストンの近郊で現金輸送車襲撃未遂事件が、また20年4月に同州のサウスブレーントリー駅近くで強盗殺人事件が起こる。

 その事件で逮捕、起訴されたのはアナーキストのニコラ・サッコとバルトロメオ・バンゼッティ。裁判が行われている当時から冤罪だと言われ、抗議は世界規模で広がったものの、死刑が言い渡されて27年8月にふたりは処刑された。事実には関係なく、「アナーキストの犯罪」というタグが支配層は欲しかったのだろう。

 世界中に「アル・カイダ」という名前が広がったのは2001年9月11日以降だろう。この日、ニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、詳しい調査が行われないまま、ジョージ・W・ブッシュ政権は「アル・カイダ」が実行したと宣伝し始めるが、未だに真相は明らかになっていない。その大きな理由はアメリカ政府が重要な情報の開示を拒否しているからだ。少なからぬ人はイスラエルとサウジアラビア、そうした国とつながるアメリカの一部支配層に疑惑の目を向けている。

 この出来事以降、「アル・カイダ」は「テロリスト」の代名詞になり、アメリカ軍が他国を侵略する口実に使われるようになった。アメリカを含む勢力によって破壊されたイラクのサダム・フセインやリビアのムアンマル・アル・カダフィの体制、現在、攻撃されているシリアのバシャール・アル・アサド政権はいずれもアル・カイダ系武装集団と激しく対立していた。

 リビアを侵略した際、NATO軍が手を組んだLIFGはアル・カイダ系武装集団。この侵略戦争でアメリカを含む西側、ペルシャ湾岸産油国、イスラエルがアル・カイダ系武装集団を手先として使っていることが明らかになってしまった。

 2011年10月にカダフィは侵略軍に惨殺されるが、その直後にベンガジでは裁判所にアル・カイダの旗が掲げられ、その映像がYouTubeにアップロードされた。イギリスのデイリー・メイル紙も伝えている。

 CBSのインタビュー中、カダフィ惨殺を知らされたヒラリー・クリントン国務長官は「来た、見た、死んだ」と口にしている。その半年前、ロシアのウラジミル・プーチンは「誰がNATOにカダフィを殺す権利を与えたのだ」と侵略勢力を激しく批判したが、それを無視して殺害、クリントンはそれを喜んだわけである。

 カダフィ体制の崩壊でリビアは無政府状態になり、軍の倉庫から武器/兵器が持ち出されてトルコへ運ばれている。輸送の拠点になったのはベンガジにあったCIAの施設で、そうした事実をアメリカ国務省は黙認していた。輸送にはマークを消したNATOの輸送機が使われたとも伝えられている。

 ベンガジにはアメリカの領事館があるのだが、そこが2012年9月11日に襲撃され、クリストファー・スティーブンス大使も殺されている。スティーブンスは戦闘が始まってから2カ月後の2011年4月に特使としてリビアへ入り、11月にリビアを離れるが、翌年の5月には大使として戻っていた。領事館が襲撃される前日、大使は武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃の当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っている。

 運び出された武器/兵器の中に化学兵器も含まれていた。これをシリアで使い、政府軍に責任をなすりつけてNATO軍が直接、介入する口実に使用としたと言われている。リビアで行ったようなことをしようとしたわけだが、スティーブンスの行動を見ると、彼はこうした工作を熟知していたと考えられる。彼が知っていたということは、上司の国務長官だったヒラリー・クリントンも報告を受けていたはず。

 2012年11月、デイビッド・ペトレイアスがCIA長官のポストを辞しているが、この人物はクリントンと緊密な関係にあることで有名。スティーブン大使から報告されるまでもなく、ベンガジでの工作をクリントンは知っていたと見るべきだろう。ペトレイアスの辞任はペトレアスの伝記『オール・イン』を書いたポーラ・ブロードウェルとの浮気が原因だとされているが、これはカモフラージュだった可能性がある。

 この時点で、世界的には、アメリカ/NATOなどがアル・カイダ系武装勢力を手先として使っていることは明白になった。「テロとの戦い」はインチキであり、「テロリスト」はアメリカの支配層が侵略の口実に使っているだけだということも確認されたわけだ。

 2012年当時、シリアで政府軍と戦う「穏健派」が事実上、存在しないことはアメリカ軍の情報機関DIAも知っていて、ホワイトハウスへ報告している。DIAが2012年8月に作成した文書によると、反シリア政府軍の主力はサラフ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIで、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているとしている。DIAによるとアル・ヌスラはAQIの別名。ムスリム同胞団はワッハーブ派から強い影響を受け、アル・カイダ系武装集団の主力もワッハーブ派だ。つまり、シリアで政府軍と戦っているのはサウジアラビアの国教であるワッハーブ派の信徒たちだ。

 この報告書が作成された当時のDIA局長、マイケル・フリン中将はアル・ジャジーラの取材に対し、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の勢力が拡大したのはオバマ政権が決めた政策によると語っている。アメリカ政府は「テロリスト」と戦うどころか、支援しているということをDIAの元局長も主張していると言えるだろう。

 ダーイッシュという名称が知られるようになるのは2014年に入ってから。この年の1月にファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、6月にはモスルを制圧、その際にトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねてパレードし、その後継を撮影した写真が世界規模で流れたことが大きい。

 この出来事には不可解な点が少なくない。例えば、アメリカ軍はスパイ衛星、偵察機、通信傍受、人からの情報などでダーイッシュの動きを把握していたはずだが、反応していない。パレードしている車列などは格好の攻撃目標のはずなのだが、アメリカ軍は何もしていない。

 2014年9月23日にアメリカ軍はシリアで空爆を始めたが、その日に現地で取材していたCNNの中東特派員、アーワ・デイモンは翌日朝の放送でダーイッシュの戦闘員は空爆の前に極秘情報を入手し、攻撃の15から20日前に戦闘員は避難して住民の中に紛れ込んでいたと伝えていた。

 その後もアメリカが主導する連合軍はダーイッシュに対する攻撃を続けたことになっているが、実際に攻撃しているのはインフラ。その一方、「誤投下」で武器/兵器を含む物資をダーイッシュ側へ供給している。

 こうした猿芝居を粉砕したのが昨年9月30日に始まったロシア軍の空爆。この攻撃は実際にダーイッシュやアル・ヌスラなどを攻撃、政府軍は要衝を奪還しつつある。その劣勢を挽回するため、アメリカの好戦派、サウジアラビア、トルコなどは「停戦合意」を利用して携帯型の防空システムMANPADを含む武器/兵器を大量に供給、アメリカの特殊部隊が増派されたわけだ。トルコの特殊部隊も潜入していると言われている。

 アメリカの支配層はプロパガンダが得意技。広告会社やメディアを使い、タグの付け替えや欲望への刺激で人びとの心理を操作している。現代版陰陽師とも言えそうだ。





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最終更新日  2016.05.02 05:43:52
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