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《櫻井ジャーナル》

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2022.08.09
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 アメリカやイギリスが主導して行っているロシアに対する「制裁」でターゲット国のロシアはさほどでないが、EUは経済的に大きな打撃を受け、特にエネルギー資源の不足は深刻な状態である。夏も厳しい状況だが、冬を乗り越えられないのではないかという声も小さくはない。アメリカや日本もダメージを受けている。これは単なる計算違いなのだろうか、あるいはEUや日本こそがアメリカの真のターゲットなのだろうか。

 ロシアとEUを結ぶパイプラインの大半はウクライナを通過していたが、2011年11月にロシアとEUはバルト海を通るノードストリーム1を開通させている。リスクを軽減することが目的だろう。

 それと同時にノードストリーム2の建設が始まり、アメリカの妨害を跳ね除けて2021年9月には完成したのだが、22年2月24日にロシア軍がウクライナに対する攻撃を開始、EUは始動を断念する。アメリカの圧力に抗しきれなくなったわけだ。

 それでもノードストリーム1は稼働していたのだが、メンテナンスのために7月11日から輸送は停止した。コンプレッサーの装置をシーメンスが修理のために取り外し、カナダで修理して戻そうとしたところ、アメリカ政府の「制裁」で戻せなくなったことが原因だ。

 EUはドンバスでの戦闘が早期に終結し、アメリカの「制裁」が緩和されると考えたのかもしれないが、アメリカは戦闘を長期化させようとしてきた。これは本ブログでも繰り返し書いている。この状態が続くとEUは破綻するが、すでにEU内で庶民が反乱しはじめている。

 ネオコンに批判的なヘンリー・キッシンジャーは5月23日、ダボスで会議を開かれたWEF(世界経済フォーラム)の年次総会でバーチャル演説を行い、2カ月以内、つまり7月までにウクライナでの戦闘を終えるための交渉をはじめるべきだと主張した。ウォロディミル・ゼレンスキー政権はロシア側の要求を全て呑み、ドンバスやクリミアのロシアへの割譲を認めるべきだとしている。その上で中立国になり、ロシアとヨーロッパの架け橋になることが究極の目標だというのだ。それに対し、投機家のジョージ・ソロスはウクライナに対し、ロシア軍と戦い続けろと言っていた。

 ウクライナで戦争が始まったのは2014年のことだが、引き金を引いたのはアメリカのバラク・オバマ政権のネオコン。ネオ・ナチを利用してクーデターを実行、東部や南部を支持基盤とするビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したのだが、それにる東部や南部の住民が反発、ドンバス((ドネツクとルガンスク)で戦闘が始まったのだ。それ以来、アメリカの情報機関や特殊部隊は戦争に深く関与してきた。クーデターの背景には19世紀から続くアングロ・サクソンのロシア制圧戦略とそれに続く世界制覇の野望がある。

 クーデターの序章は2013年11月に始まる。首都キエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)でカーニバル的で子ども連れでも参加できるような集会が始められ、12月になると集会への参加者は50万人に達したと言われている。

 しかし、そうした雰囲気は年明け後に急変する。ネオ・ナチのグループが前面に出てきたのだ。EUは話し合いでの解決を目指していたが、アメリカは暴力的に政権を倒し、ヤヌコビッチ大統領を排除しようとしていた。

 そして2014年2月上旬、アメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補とジェオフリー・パイアット米国大使が電話で会話している音声がインターネット上に流れた。その中でふたりは「次期政権」の閣僚人事について話し合い、ヌランドは「EUなんかくそくらえ」と口にしたのだ。

 2月18日頃になるとネオ・ナチは棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始める。広場では無差別の狙撃があったが、これを指揮していたのは西側が支援していたグループの幹部でネオ・ナチのアンドレイ・パルビーだということが後に判明する。ヤヌコビッチは2月22日に排除された。

 この段階でキッシンジャーはネオコンのクーデターを批判している。この年の3月5日、彼の​ウクライナ情勢に関する論評がワシントン・ポスト紙に載った​のだが、その中でロシアは「キエフ公国」から始まったと指摘、ロシアにとってウクライナは特別な存在だとしている。

 ドンバスを含む東部の地域はロシア革命後に割譲されているのだが、クリミアの場合、1954年までロシアだった。当然、住民の多くはロシア語を話し、ロシア正教を信じている。ウクライナ語を話し、カトリック教徒が多い西部とは文化的に別なのだが、キッシンジャーもこの点を指摘している。

 このクーデターでEUはロシアというエネルギー資源の供給源をなくし、ロシアはEUという巨大マーケットを失い、両者を弱体化させられるとネオコンは考えたようだが、そうした展開にはならなかった。ロシアは中国に接近、両国は戦略同盟関係を結ぶ展開にあったのだ。ロシアと中国を分断するという戦略で動いていた勢力、例えばヘンリー・キッシンジャーやその後ろ盾はネオコンの戦術を危険だと考えるようになる。

 アメリカでは2016年に大統領選挙があったが、その前年の段階で次期大統領はヒラリー・クリントンだということで内定していたと見られている。クリントンはオバマの後継であり、ネオコンの戦略を引き継ぐことになる。

 そこでキッシンジャーが動く。2016年2月10日に彼はロシアを訪問してプーチン大統領と会談したのだ。そして大統領候補として浮上してきたのがドナルド・トランプである。結局、トランプが当選するが、有力メディアや民主党は彼を攻撃、その背後ではCIAやFBIが暗躍していた。

 その結果、オバマ政権で副大統領を務めたジョー・バイデンがアメリカ大統領に選ばれ、ロシアや中国と軍事的な緊張を高め、核戦争寸前の状態にしてしまった。核戦争にならなくても、本格的な戦争がヨーロッパで始まったなら、EUは消滅する。その時には日本も同じ運命をたどり、アメリカだけが生き残るとネオコンは考えているのかもしれないが、すでにアメリカも崩壊し始めている。






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最終更新日  2022.08.09 11:28:26



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