一方、大水は、躊躇の欠片も無く、怒涛の勢いで突き進み、たちまちソラータの街に牙を剥いて迫りゆく。
そして、いち早く、事態の異変に気付いたのは、さすがに敵将ピネーロだった。
まだ水は街に到達してはいなかったが、早朝の空気を震わせて低く響きくる地鳴りと、微かに、しかし、確実に震動し続ける大地―――!!
ピネーロは、己の天幕から飛び出すと、張り裂けぬばかりに眼を剥いて、アンドレス陣営の方角を鋭く睨み据えた。
「アンドレス…――やったのか……!
住民は、そのままで……!!」
しかしながら、仰天したのは、ピネーロや敵兵のみならず、むしろ、ソラータの住民たちだった。
恐ろしい震動と、聞いたこともないような激しい衝撃音に、突如として夢を破られた住民たち…――!!
「な、なんだ?!」
「戦が、はじまったの?!」
驚愕して寝床から身を起こした人々は、すぐさま己の目を疑った。
彼らの目の前で、住民たちの家の床面は、ドア下の僅かな隙間から流入する水によって、早くも浸襲を受けていたのだ。
「!!――なっ……?!」
呆然と見入る目の前で、水の魔手は、みるみる床全面に広がっていく。
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≪アンドレス≫
トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。
若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。
スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。
現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。
≪ピネーロ≫
アンドレス軍が包囲網に封じたソラータのスペイン軍を指揮するスワレス大佐の副官。
スワレス大佐がアンドレス軍に捕虜として囚われてからは、実質上の指揮官を務めている。
かつてアンドレス暗殺計画の実行犯をも務めた、手段を選ばぬ冷徹で強硬な人物。
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