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2004.07.09
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カテゴリ:カテゴリ未分類
ある土地である文化の中で長く暮らしている人にとっては、時に新鮮なものの見方や世界の解釈の仕方が必要だ。そうしないと脳が固まってしまい、刻々変化する世界に対応できなくなってしまう。対応する必要もないでしょ、生まれ育った文化を意固地に守っていけばいいじゃない、という考え方もあるだろう。そういう考えが支配する社会は、やがて消えていくしかないと思う。

ハリウッド映画という「文化」に慣らされた僕らにとっては、ペドロ・アルモドバールのようなユニークな世界の見方はとても貴重だ。

以前にも「神経衰弱ぎりぎりの女達」や「ハイヒール」を観て、印象に残るシーンとか切れ切れのアイデアには光るものがあったんだけど、一つ一つのの映画のまとまったテーマとしてはそれほど記憶に残っていなかった。

ももちきさんの映画評を読んで刺激され、近作「トーク・トゥ・ハー」と「オール・アバウト・マイ・マザー」をじっくり鑑賞してみた。

映画のあらすじは例えばこのサイトでうまくまとめてある。

「トーク・トゥ・ハー」では、意識があろうと植物人間であろうと成立する人間の繋がりというのがあるんだな、という点が印象に残った。ベニーニョは昏睡状態のアリシアを献身的に介護する。アリシアの髪を洗い爪を切り、身体を拭いて着替えをする、そして日々のことを話し掛ける。そこにあるのは普通の人間関係より強度の強い繋がりだ。

ベニーニョとアリシアの繋がりには落とし穴がある。それは、双方向ではなく一方的だということ。どんなにベニーニョの思いが強くても、昏睡している人間への愛は一方通行でしかない。ベニーニョにとってはそんなことはどうでもいいのだ。彼はアリシアに話続け介護を続け、やがて昏睡状態から回復した時に一緒に暮らす準備を進める。ある日、風変わりなサイレント映画を観て感情の昂ぶった状態のベニーニョは、通常の社会では絶対に許されない行為に及ぶ。彼自身の中では、必然的な行動なのだ。アリシアへの愛を完結するためには必要なことなのだ。監督/脚本家・アルモドバールはこの行為を糾弾していない。罰してはいるが、受け入れている。というのは、このベニーニョの社会的には卑劣な行為のおかげで、アリシアは意識を回復するから。アルモドバールがこの行為を受け入れている証拠である。

もう一人の男・マルコもある昏睡状態の女性を愛している。この女性は女性闘牛士だったが、ある日牛に突き倒されて意識を失った。ベニーニョはマルコに、昏睡状態の愛人に話し掛けることを勧める。彼女達が聞いてないと誰がいえよう。クリームを唇に塗り手足を洗い介護してやれよ、と。ベニーニョとマルコは友情を深める。二人とも優しい人間だ。マルコは折々の場面で涙する、過去を思い出したり感動したり。この映画にでてくる関係のなかで、多分一番双方向的で深いのが二人の友情だろう。

アルモドバールはこの映画で何を言いたいのだろう?この映画に限らないが、アルモドバールは一つのテーマを持って映画を作っていないと思う。もっと複雑なのだ。映画の中でも、ある舞踏家に言わせている、「思ってるよりずっと複雑なのよ」と。男の愛情は思い込みから来る独りよがりのことが多い、というサブ・テーマもあるだろう。(しかし、こういう愛を全面的に否定はしていない。)話し掛けることは愛することだという言葉もあった。冒頭の劇の場面で、眼をつぶった女が二人部屋の中を好き勝手に走り回る場面がある。男が一人、彼女達の行く手にある障害物を必死で取り除いている。滑稽とも言える男の表情に、アルモドバールの自意識を感じる。男はそういうものなのか。

ベニーニョとはいったい何なんだ?母親の介護を長年続けてきたために社会への、あるいは女性への適応性を失った引きこもりなのか。それとも痛々しいほどに優しい愛すべき男なのか。映画の最後で、意識を取り戻したアリシアとマルコが劇場で出会い、次の関係の芽生えを予感させる。しかし、この2人の関係はベニーニョの存在で媒介されているのだ。アリシアの座席とマルコの座席の間に、誰も座っていない一つの座席がひっそりとある。マルコの親友で、アリシアを思い自殺したベニーニョという記憶だ。





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最終更新日  2004.07.11 09:53:00
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