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ネーション・ステートについて 1
今週と来週(位でまとまるといいんだけど)は、国民国家について考えてみようと思う。 実をいうと、数年前に友人のある経済学者に教わるまで、国民国家がネーション・ステート(Nation-State)の訳だとは、はっきりとはわかってなかった。それどころか、国民国家というのが何かというのもわかってなかった。国民に主権がある国家だろう、などと漠然と思ってた。アレックスさんの復刻日記にも書いてあったが、日本は隣国と国境を分かったことのない国で、その日本で育ち世界史を受験勉強でしか理解してこなかった僕のような人間は、国民国家という言葉の意味をまるでわかってなかった、ということなのだ。 僕の尊敬する岡田英弘さんの「歴史とは何か」(文春新書)に、かなりいい説明が出ていた。 まず、ステイトについて。 「さて、日本語で『国家』と翻訳される『ステイト』のほうだが、この英語は・・・もとはラテン語の『スタトゥス』(status)からでている。『スタトゥス』は、『立つ』という意味の動詞の過去分詞形で、『立っていること、位置、地位、身分、財産』を意味した。王の財産だった旧植民地を、市民が乗っとって自分達の財産にしたのだから、それを『財産』という意味で、『ステイト』と呼んだわけだ」(p.159) そして、ネーション。 「英語の『ネイション』の語源は、もともと、ラテン語で『生まれ』を意味する『ナーティオ』(natio)ということばだった。・・・(ヨーロッパ中世の大学で―引用者注)出身の地域が同じ学生達の組織をあらわす『ナーティオー』ということばが、19世紀に新しく生まれた『国家』の正当な所有権者をあらわすことばとして使われた。それを日本人が漢字で『国民』と訳したわけだ」(pp.161-162) ここで、日本人として非常に直感しにくいことは、ヨーロッパその他の世界の殆どでは、18世紀の末まで国境というものがなかったということだ。 「アメリカ独立以前の世界には、政治形態としては君主制と、ヴェネツィアやフィレンツェのような自治都市しかなかった。・・・国民というものはまだなかったし、国境というものもまだなかった」(p.159) フランスとかドイツとかいう国がずっと存在したような錯覚を、僕達日本人は持っているが、18世紀になるまで、今の国境とは異なる王国や貴族領が存在しただけなのだ。例えば、カタリ派の歴史で見たように、南フランスは北フランスとは全く別の文化をもった地域だったのだ。同じフランスの国民という感じは全くなかったのだろう。 同じ地域に住み同じ言語や文化を共有する人たちが、国王が持っていた主権を引き継いだ共同体、という感じが「ネーション・ステート」だろうか。すると、これは国民国家というより、民族国家と訳したほうがいいのではないか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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