あなたには帰る家がある(山本文緒)
2006年8月読了。この本も夫婦のあり方や生き方、結婚の中の役割分担に焦点を当てた作品。OL時代は結婚がゴールで早く楽して暮らしたいと思い、故意に妊娠して結婚にこぎつけた主人公が結婚後の生活に落胆するというストーリー。自分の方が夫よりも稼げるだとか能力があるだとかそういう考えもあり、立場を逆転させようとまでする。そして働いてみてその大変さにも気付き、夫も主夫をしてみてその大変さに気付くという最後。男だから働いて家族を養うのは当たり前と言う考え方の裏には自分に本当に家族が守っていけるのか、自分の肩に全てがかかっている重圧などもあったりする。そんな色んな思惑を考えさせられるように書かれている。男も女も結局は大変と言うところで締めくくっているが、結局、そうではなくてこの結婚のあり方や個々の生き方がそもそも間違いではないか、と言う所までは行っていない。村上龍氏の最後の家族は、その辺に焦点が当たっていたが…。この作家の作品はちょっと怖かったり、惨めだったりする女性が主人公だったりするが、これは正統派の家族のあり方を問う作品だった。長編も結構珍しいと思うが良くかけていて中々良かった。お勧め度:9C猫の書評集はこちら。August 10, 2006 1:57pm (EDT)