カテゴリ:バレエ(国内バレエ団)
【服部有吉&首藤康之パートナーシップ・プロジェクト2006】
HS06 Bunkamura シアターコクーン 14:00 開演 <キャスト/スタッフ> 演出・振付:服部有吉 出演:首藤康之~『Homo Science』のみ エレン・ブシェー ヨハン・ステグリ ゲイレン・ジョンストン 大石裕香 服部有吉~『ゴーシュ』のみ 服部有吉は体調不良により、2幕のみの出演に。(残念) 1幕の『Homo Science』は、首藤康之を中心にした、近未来的な雰囲気の漂う抽象的なコンテンポラリーダンス。うって変わり2幕の『ゴーシュ』は、宮沢賢治のおとぎ話「セロ弾きのゴーシュ」を題材にした、子どもから大人までが楽しめる、クラシックテイストのコミカルなバレエ・シアター作品。服部有吉以外のハンブルクバレエ団のダンサーは、1、2幕ともにフル出演だった。 1幕 ●『Homo Science』 淡いグレーの壁に囲まれた密室。薄暗い部屋の中に、屈伸姿勢の一体のロボット(ゲイレン・ジョンストン)が置かれている。身体にフィットしたベージュのレオタード(男性はパンツ)に、銀色の紐状の飾り(?)といったシンプルな衣裳。水の揺らめきのような薄明るい照明に照らされる部屋は、まるでプールの底のようだ。床には、花を連想させる幾何学模様の円形が浮かび上がる。美しく不思議な空間だ。 そこへ、上から宙づりにされたロボットが、一体…また一体と降ろされてくる。どうやらこの部屋はロボット工場の実験室=ラボらしい。5体のロボット(通常は、服部有吉を含め6体バージョンか)は、一体の動作に呼応するように反応しはじめる。ロボット的なカクカクした動き。ある時は、壁にぶつかったり、円形の周囲をぐるぐると回ったり。非常に機械的で、ぎこちないロボット達だが、徐々に動作がなめらかに進化する。単なる機械から、感情を持つ人間により近い人造人間へ進化してゆくのか?色々と想像をめぐらせてみる。 ロボット達の世界に、一定の秩序が生まれたかのように見える。と、そのうちの一体(首藤ロボ)が不規則な動きを始め、他のロボット達を次々と撹乱させてしまう。壊れたロボットは床に倒れ動かなくなる。最初に置かれていたゲイレン・ロボは、壁にもたれて微動だにしない。故障か?男性ロボ2体の対決で、首藤ロボが生き残る。首藤ロボの身体からは、他のロボットを制御不能にさせる妨害電波でも出ているようである。ラボを支配したかのように見えた首藤ロボだが、最後は自らも壊れ床に倒れる。 密室かと思われた部屋の壁下半分が開き、作業員が壊れたロボットを肩に担いで撤去する。動きが止まっていたゲイレン・ロボが、再びぎこちなく動きだし、最初と同じ場所で同じように屈伸姿勢で止まる。ブザーが鳴り、再び上からロボットが降ろされる…。 無機質な世界で繰り広げられる作品ながら、社会における「生命」の力関係や連鎖について考えさせられる作品だった。 2幕 ●『ゴーシュ』 舞台上手奥には、レッスン・バーが置いてある。バレエ団のリハーサル室風景。リーダーの女性ダンサー(ブシェー)のお手本に合わせ、他のダンサー達も次々に踊りだす。ゴーシュ@服部有吉は、カンパニーの異端児ふう。振付けを無視して、自分勝手にアレンジして踊っている。(側転しちゃったりも)リーダーに叱られるゴーシュ。「みんなのように踊りたくても、できないんだよぉ…」と、ちょっとふれ腐れ気味。そうこうするうちに、もう1人の男性ダンサー(ステグリ)にぶつかって怪我をさせてしまう。よろよろと足を(腰?)かばいつつ、バーにつかまる。かなり痛そうだ。心配そうに駆け寄る仲間達。ゴーシュも一応は声をかけるものの、あまり心配そうには見えない。怒って帰ってしまうダンサー達。 夕暮れのリハ室で、一人で練習をするゴーシュ。「どうしてオレ、皆とうまくできないんだろ…(自己嫌悪)」って雰囲気を漂わせながら、苦悩と孤独を表現するようなダンス。正座の姿勢から、トウ(足の甲側)立ちで起き上がる技は、ミーシャを思い出してしまった。素晴らしい身体能力。 とぼとぼと失意のまま家に帰るゴーシュ。 家に帰ってからも、ゴーシュは、「はぁ~ぁ」と肩を落とし、何度もため息をつく。 そこへ猫(ブシェー)が現れ、ゴーシュにあれこれと踊りを教える。サン・サーンスの「動物の謝肉祭」の”ライオン”(たぶん)の曲に合わせ、高慢ちきな猫が偉そうに、でも放っておけないわっ!という感じで、ゴーシュにあれこれとお節介。しかしゴーシュが、いたずら心で(巨大な)マッチをお尻ですると、猫は驚いて逃げてしまう。 次に鳥(ステグリ)が窓から飛び込んでくる。(本当に飛び込んできた!笑)自信過剰でアーティスト気取りの鳥は、ゴーシュにお手本を見せる。「ウォッホン。このようにやりたまえ」と技を見せつける鳥。”瀕死の白鳥”の曲に合わせ、優雅~に踊ってみせる。真似をするゴーシュのダンスも洗練されてきたような感じが…? しかし、ゴーシュがふざけて、鳥を捕まえて肩車すると、窓にぶつかってしまう。目を回した鳥は、こりゃたまらん!と、窓から飛び出して逃げてしまう。「あーあ…また逃げちゃった。大丈夫かな…」と、ちょっと心配そうに窓の外を眺めるゴーシュ。 すると、ふとっちょの狸(ジョンストン)がドアから入ってくる。大らかで陽気な狸は、ノリノリで楽しそうにタップを踏む。ここはジャズ・テイストの曲だ。狸が、ぐるぐる回ると、大きなお腹がぶわーーと膨らむ。お茶目だ。最後には、社交ダンスまでして、二人はすっかり意気投合。ゴーシュも「ダンスは、本当はこんなに楽しいんだ!」と、自信を持ち始めたみたい。 …と、客席にスポットライトが当たる。コソコソ、ちょこまか動くのは…ねずみだ。何やら、ゴーシュの様子をうかがっている。ゴーシュがねずみ(大石)に気付き、舞台に引き上げる。自信なさげな謙虚なねずみに、今度はゴーシュがダンスのレッスンをしてあげる。「ありがとぉ~」と喜んで帰るねずみ。 夜が明ける。 動物達との出会いで、すっかり自信をつけ幸せそうなゴーシュだが、「あ、いけね!」と、時間に気づき急いで家を出てゆく。場面転換。 幕前で、ダンサーたちがまだ現れないゴーシュをやきもきと待っている。今日は発表会なのだ。駆け込んでくるゴーシュ。間に合った! 幕が開き、いよいよ発表会。5人でバランシン風のシンフォニック・バレエを踊る。踊りまくり。この振付けは、体力いりそー。ゴーシュは、本番でも側転をしたり、時折やんちゃな顔をのぞかせながらも、堂々と踊り切る。 ゴーシュの…というより、服部有吉の成長物語を観させてもらったような、不思議な気持ちになる作品だった。 ハンブルクバレエ団を退団しても、頑張ってください。(昨年のハンブルクバレエ団公演「冬の旅」を観られなかったのが、悔やまれる~) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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