カテゴリ:バレエ(国内バレエ団)
新国立劇場バレエ団
「白鳥の湖」 全4幕 新国立劇場 オペラ劇場 開演 15:00 振付:マリウス・プティパ レフ・イワーノフ 作曲:ピョートル・I・チャイコフスキー 改訂振付・演出:牧 阿佐美(コンスタンチン・セルゲーエフ版による) 舞台装置・衣裳:ピーター・カザレット <配役> オデット/オディール:酒井はな ジークフリート王子:山本隆之 ロートバルト:貝川鐵夫 道化:グレゴリー・バリノフ 王妃:豊川美恵子 王子の友人(パ・ド・トロワ)高橋有里、さいとう美帆、マイレン・トレウバエフ 小さい四羽の白鳥:遠藤睦子、西山裕子、本島美和、大和雅美 大きい四羽の白鳥:真忠久美子、厚木三杏、川村真樹、寺島まゆみ スペインの踊り:楠元郁子、厚木三杏、マイレン・トレウバエフ、冨川祐樹 ナポリの踊り:井倉真未、小野絢子、八幡顕光 ルースカヤ:湯川麻美子 ハンガリーの踊り:西山裕子、市川 透 二羽の白鳥:厚木三杏、川村真樹 今回は、新国立劇場のオリジナル版「白鳥の湖」のお披露目公演でした。 衣裳装置を全面的に作り替え、牧 阿佐美氏の改訂振付けによる新しい「白鳥~」に期待も膨らみます。 とはいっても国立のバレエ団である立場上、質の高さと、万人に受け入れられる演出は必然だと思うので、斬新な解釈や奇をてらった演出は、まずあり得ないと思いました。…で、やはりその通りでした。 開幕後まずは、ピーター・カザレットによる舞台装置(背景画)に感嘆。湖の畔に建つ城内からの景色は、ブルーグリーン系の濃淡が美しい風景画で、”ひんやり”とした空気を感じさせます。三幕の舞踏会のシーンでは、茶系の色彩で重厚感のある城内が描かれ、中世の王宮絵画のようでした。衣裳も全体的にシックな色合いで、とても上品で結構好みかも。 新制作にあたり、舞台装置、衣裳共に、あえて時代考証はしなかったそうですが、元々ストーリーは他愛無いファンタジーだし、感覚的に楽しむバレエに、厳密に時代考証を求めることには意味を感じないので(ドラマティック・バレエならともかく)、その点は観る側の想像にまかせてよいでしょう。センスが良くて奇麗なら、何でもいいのよ。(笑) 例えば冒頭で、オデット姫が侍女(姉妹?)たちと刺繍をしている部屋には、白鳥の像が何体か据えられております。さながら「白鳥の間」のよう。このあたりでは白鳥が多いので古くから白鳥を愛で、白鳥神話が伝わる土地なのだな…と連想させます。オデットはロートバルトに連れ去られ白鳥に変えられてしまうのですが、この白鳥の像が、ジークフリート王子の城にもあるのです。オデット姫とジークフリート王子の居城は、同じなのかしら。 …「オデット姫は、遠い昔、魔王に連れ去られ、白鳥の姿に変えさせられた、かつての王家の姫君」なのかもしれません。という具合に、いくらでも夢を描けます。 いま、誰のオデット(オディール)が最高か?と聞かれたら、おそらく多くのバレエファンが「ザハロワ」と答えるでしょう。本物の白鳥のようにしなやかで儚げなオデットは、まさに当たり役だと思いますし、気高い色香で人々を誘惑するオディールも踊るたびに程よく”毒気”が増してきて、魅力が増してきていますよね。以前観た感想は、こちら。今回もザハロワを観たかったのですが、色々と諸事情もあって、酒井はな×山本隆之の日を鑑賞しました。 実は、酒井はなさんを観るのは初めてだったのですが、これまでも「マノン」「カルメン」などのドラマティックな役どころを演じて好評を得ているだけあって、オデット、オディールの演じ分けが明確で解りやすかったです。テクニックも確実で、特にバランスが安定していました。三幕の32回転では、時々ダブルも入れて頑張ってました。最後はちょっと軸がずれてしまったけれど、回り終わって、「やった!」と言わんばかりの素の喜びよう(?)で、弾むように退場されたのが印象的です。 山本隆之さんのジークフリート王子は、表情やマイムが雄弁で、「大人になることへの躊躇」と「強い自分になりたい」、そんな相反する気持ちが見え隠れして、ドラマ的にも説得力があって良かったです。「こうもり」のヨハンとは、また違うノーブルな魅力が素敵でした。 愛の力でロートバルトを”あっさり”倒し、2人は結ばれ、めでたしめでたし…のラストは、これまでにマシュー・ボーンだのノイマイヤーだの(観ていないけれどヌレエフだの)の、”悲劇バージョン”に慣れ親しんだせいで、正直物足りなさを感じますが、オデットとオディールという同じ顔でありながら対照的な魅力を持つ「女」との出会いによって、単純 やはり白鳥の湖は、「王子の物語」として鑑賞する方が、見終わったあとの満足度(感情移入度)が増すように思います。「オデット&オディールは、ひたすら美しく。王子はドラマティックに」が鍵ですね。 ルースカヤをはじめキャラクターダンスや、その他のダンサーについて、また思い出したら書きます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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