カテゴリ:バレエ(国内バレエ団)
【モーリス・ベジャール生誕80周年記念特別公演シリーズ】
東京バレエ団「ベジャールのアジア」 東京文化会館 開演 15:00 ”アジア”をテーマにした、エキゾティシズムとエロティシズムに溢れたプログラム。 「アダルト・プロ」と言ってもいいぐらい!(笑) それはともかく、ベジャールの感じた日本、インド、中国が舞台のこれら3作品を通して、ヨーロッパ人に映る「アジア」の印象ってこんなものか(悪い意味じゃないよ)と逆に想像してみるのもオツかなと思います。毎度、振付けはベタですが(失礼!)、想像力フル回転で楽しめるのがベジャール作品の好きなところ。 ●舞楽 振付:モーリス・ベジャール 音楽:黛 敏郎 <配役> 小出 領子/高村 順子 大嶋 正樹 長瀬 直義/横内 国弘 高木 綾 NBSサイトの解説に『 ある日本青年が時を超え、舞踊が何千年もの伝統と結合する、官能的で魔術めいた儀式によって、永遠の結合の力強さを再発見する。』とあるけれど…正直「?」でした。現代と古代の象徴が、アメフト選手と巫女なのか。 アメフト選手が舞台四方の台上で腰に手を当て仁王立ち…四天王に見えなくはない(かなりこじつけ)。巫女たちが火、水、鏡を使用して何やら儀式を行うシーンが意味深。大嶋@青年は、袴みたいな赤パンツに鉢巻き姿で見目麗しい。古代から現代の時空を彷徨う時の旅人か。一見”全裸”に見えるベージュのレオタードの男女二組は、この世の「命」の連なりは男女の交わりがあってこそ、と意味しているのか。 ”舞踊と伝統の結合”にまで、想像を膨らませるまでには至らず。 小出さんのまろやかな動きが際立って美しかった。 レオタード系の飾り気ゼロの衣裳だと身体の線はもちろん、微細な筋肉の動きまで全てわかるので、ダンサーも緊張するだろうなぁ。 ●バクチ 振付:モーリス・ベジャール 音楽:インドの伝統音楽 <配役> シャクティ :上野 水香 シヴァ:後藤 晴雄 振付けそのものが”儀式”のような錯覚を覚える官能的な作品。 上野水香嬢の日本人離れしたスタイルの良さと柔軟性が際立ちますね。 「カーマスートラ」に出てきそうなエロティック・ポーズもあるのに、奇麗系の上野さんだからなのか、妖艶さは五割引?という感じ。本場ベジャール・ダンサーの「バクチ」よりも舞台上の温度と湿度は確実に下がるけれど、こういう”さらり”とした「バクチ」もありかな。後藤さんは、破壊の神らしく(?)怒髪天のような髪型でした。 ●中国の不思議な役人 振付:モーリス・ベジャール 音楽:ベラ・バルトーク <配役> 無頼漢の首領:平野 玲 第二の無頼漢-娘:古川 和則 ジークフリート:中島 周 若い男:井脇 幸江 中国の役人:木村 和夫 「中国の不思議な役人」は、1926年にベラ・バルトーク(音楽)/メニヘルト・レンジェル(台本)のパントマイム劇が世界初演だが、スキャンダラスな内容ゆえに上演禁止となったいわくつきの作品。ベジャールは、フリッツ・ラングの映画「M」のイメージを借りて1992年にバレエ化。 舞台は無頼漢(ぶらいかん)達のアジトらしき部屋。アンダーワールド。 無頼漢の首領の元、娼婦の”娘”が男をを誘惑し子分たちは餌食となった男の身ぐるみを剥がしていく。色仕掛けと暴力。今日もすでにジークフリート(”ターザン”のような虎パンツなのは何故!?)と若い男が犠牲となった。 しかし、3番目に現われた“役人”だけは、何をしても堕ちない。決まりきった仕草(振付け)を繰り返し、顔も無表情で一体なにを考えているのかわからない。不思議というより不気味…かも(笑)。役人の衣裳は人民服。これって中身の無い人間みたいに、誰も彼も同じに見えるんだよね。 「こいつどうやっても堕ちないよ。あたい…もう怖いよ、やめようよ!」と怖れる娘。 しかし、首領は爬虫類のように表情を変えず「やれ」と命ずる…。恐れおののきながら何度も誘惑を試みる娘。このあたりの古川@娘と平野@首領のやりとりは見応えあり。 ついに役人は娘に堕ち、今度は役人が娘を求めはじめる…。 首領から命ぜられるままに「偽りの愛」を演じ続けた娘が、本能の愛(性愛だとしても)を求められ、恐怖すら漂わせながら困惑する姿は、哀れで痛々しい。(そう感じるのは、私が女だから?) 最後、娘は自らの意志で役人にナイフを向ける。子分達は倒れた役人の首に縄をかけ、息の根を止めようとする。恐怖から逃れられた安堵の薄笑いを浮かべながら、その様子を見守る娘。(古川さん、怖いよ~) 娘はブロンドの鬘を横たわる役人に投げつける。…と、息絶えたと思われた役人が最後の力を振り絞るように起き上がる。ひぃ~。まだ生きていたのか。 想いを満たすためなら、ゾンビ(?)のように何度も息を吹き返す執念と、鬘と疑似○○する変態さ加減が、やはり「不気味な役人」でした。 衝撃昨ですね。 キャストを変えてまた観たい作品です。再再演希望! ★NBS(日本舞台芸術振興会)HP http://www.nbs.or.jp/stages/0701_asia/index.html お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.01.30 17:40:59
コメント(0) | コメントを書く
[バレエ(国内バレエ団)] カテゴリの最新記事
|
|