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カテゴリ:刑法
刑法平成19年第1問
【問題】 甲,乙及び丙は,事故死を装ってXを殺害しようと考え,丙がXを人けのない港に呼び出し,3名でXに薬剤をかがせて昏睡させ,昏睡したXを海中に投棄して殺害することを話し合って決めた。そこで,丙は,Xに電話をかけ,港に来るよう告げたところ,Xはこれを了承した。その後,丙は,このまま計画に関与し続けることが怖くなったので,甲に対し,電話で「待ち合わせ場所には行きません。」と言ったところ,甲は,「何を言っているんだ。すぐこい。」と答えた。しかし,丙が待ち合わせ場所である港に現れなかったので,甲及び乙は,もう丙はこないものと思い,待ち合わせ場所に現れたXに薬剤をかがせ昏睡させた。乙は,動かなくなったXを見て,かわいそうになり,甲にX殺害を思いとどまるよう懇請した。これを聞いて激怒した甲は,乙を殴ったところ,乙は転倒し,頭を打って気絶した。その後,甲は,Xをでき死させようと岸壁から海中に投棄した。なお,後日判明したところによれば,Xは,乙が懇請した時には,薬剤の作用により既に死亡していた。 甲,乙及び丙の罪責を論ぜよ(ただし,特別法違反の点は除く。)。 【答案】 甲 の 罪 責 1 Xに対する殺人罪(199条) (1) 甲は、乙丙と話し合い、Xの殺害を決めたので、殺人罪の共謀が成立する。 (2) 甲乙は、Xに薬剤をかがせ昏睡させ、Xは薬剤の作用により死亡した。ここで、Xに薬剤をかがせた行為は、Xを海中投棄して殺害するために昏睡させようとしたにすぎず、殺人罪の実行行為といえるか。 昏睡させる薬剤をかがせた行為は、睡眠薬が自殺に用いられること、医師の処方箋がなければ入手できないことを一方で想起しても、使用する量、体調、年齢等によれば死亡の結果発生の客観的な現実的危険性を優に認めることができる。また、人気のない港でXを昏睡させれば海中投棄を妨げる事情はとくに認められず、後続に予定されていた海中投棄と一体をなす殺人計画の一環であった。そうすると、海中投棄により殺害するつもりであったとしても、薬剤をかがせる時点ですでに殺人罪の構成要件的故意が認められる。したがって、殺人罪の実行行為といえる。 (3) そして、昏睡させる薬剤をかがせ、その作用により死亡の結果が発生することは、社会通念上相当といえるので、相当因果関係が認められる。 (4) また、計画とはことなり、海中投棄を待たず薬剤をかがせた行為により死亡の結果が発生しているが、このような因果関係の錯誤は故意を阻却しない。 (5) 以上より、甲に対する殺人罪が成立する。 2 乙に対する傷害罪(204条) 甲が、乙を殴って転倒させ、頭を打った乙が気絶した行為につき、人の身体の生理的機能を害し「傷害」したといえるので、乙に対する傷害罪が成立する。 3 Xに対する死体遺棄罪(190条) 甲が、Xを海中に投棄した行為は、客観的には死体遺棄罪(190条)の構成要件に該当するが、甲はXをでき死させる殺人(199条)の意図であったことから、異なる構成要件間の錯誤であるいわゆる抽象的事実の錯誤の処理が問題となる。ここで、両者の間には重なり合いが認められず、客観的な死体遺棄行為に対応する構成要件的故意を欠くことから、死体遺棄罪は成立しない。 4 まとめ 以上より、甲には、殺人罪と傷害罪が成立し、両罪は併合罪(45条前段)となる。 乙 の 罪 責 1 乙が、甲丙と共謀の上、Xに薬剤をかがせてその作用により死亡させた行為につき、殺人罪(60条、199条)が成立する。 ここで、乙は、動かなくなったXを見て甲にX殺害を思いとどまるよう懇請したが、この時点でXは既に死亡していたのだから、中止犯(43条但書)は成立しない。 丙 の 罪 責 1 丙が、甲乙と共謀の上、Xを殺した行為につき、殺人罪(60条、199条)が成立する。 この点、丙は、Xに港に来るよう電話をかけた後、怖くなったので、甲に対し計画からの離脱を告げ、待ち合わせ場所である港には現れなかったが、離脱は認められず、中止犯は成立しない。以上(52行、42分) [コメント] 0930~【2】、0940~44構成(4分)、1048~1130書く(42分) 速攻回収された~ 早すぎた構成要件の実現(最1決平16.3.22)は、T前田250を答案化する講座(合格者講義)でやった。 試験まえには聞いてないが、択一まえ、前田250をよんでいました 乙丙は、結論だけ書いて、論点にひとことふれただけに終わりました。とくに丙がイタイ~ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.07.19 21:49:29
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