浴室の慕情
金という現実性を伴ったある種の支配から逃げられないのは、逃げないのは、私があの人のそういった現実性に最早征服され、慕情しているからだ。私は金や人間や、私に向けられた感情を伴った行動に現実や将来を直視することが出来ない。私は彼の現実性に微睡を壊され、支配され、しかしその悦楽とした、自虐を伴った征服性に、また、微睡を繰り返す。だから、だけれどそれでも愛している、という言葉を呟きたいと願うのは、溺死する、その直前であれば好いと願う。願っている。*誰か何かを裏切りながらでないと生きてはいけない、その様な気がして、私はその罪悪の中でしか自分というものを保っていけないような気がして、そうして、激しく、欲情する。