|
カテゴリ:小説 桃色頭巾参上!
幕末 桃色頭巾参上! 第一話、 大奥の赤い井戸 泣くな鴉よ 覗くな小鳩 赤く染まった 大奥の井戸 「伊賀の旦那、大奥の井戸の水は赤いってえ話を聞いたことがあるんですがねえ、」 「どん兵衛、うっかりそんな無礼なこと口にしちゃあいけねえよ、、」 第十一代将軍徳川家斉は40人の側室を持ち、55人の子供を産ませてた 精力絶倫男で、息子の十二代将軍徳川家慶もまた、血筋は争えず、 父にも負けぬ好色漢で七人の側室、29人の子を儲けたことはしっちょるな。 だが、それも大奥が公に認めた数字であり、2000人もの美女を集めた楽園を うろうろしていた将軍にはその数の十倍ものお手付き女がいたのだ、 必然のことながら秘匿の子供も産まれていたのだよ。」 「こちとら、ちょんがぁ長屋の独り身だってのに、えらい違いでございますね、」 「どん兵衛なんざ、せいぜい三人の女が精いっぱいだろうな、、」 「伊賀の旦那、岡場所の女じゃ無けりゃね、一人で十分でさあ」 伊賀の頭目が徳川の情勢を探るため伊賀忍者のくノ一の楓をに大奥へ忍び込ませ、その楓に将軍家慶様の手がついたことも何ら不思議なことではなかった。 無論、それが伊賀の謀略ではあったことを家慶は知る由もなかったが、、 伊賀秘伝の媚薬を飲まされ、楓のくノ一の房術、九ノ一道の手練手管にかかれば、数多の女を相手にしてきた将軍家慶とて惑わされ楓の女体の虜になるのは 当たり前で、夢中になった家慶は最後の一滴まで楓の中にしぼり出す日が続き、 間もなくして、楓が身籠ったことも至極当然のことであった。 だが、大奥女中法度に背いた懐妊は御小姓の身分の楓に許されることではなく、 大奥の御年寄、中﨟に知れれば、間違いなくややこが闇に葬られることは定かであった。 大奥では、予期せぬ妊娠、あげく内密の出産などで、自害せざるをえなくなった不幸な女が絶えなかった。 そして、赤子の遺棄も秘密裏に行われていた。 大奥に奉公する、旗本や御家人などの武家出の女、裕福な商家の娘が行儀見習いで 奉公に上がる頃の娘たちはみな性に目覚める年頃であった。 大奥の中には男は将軍一人なので、女たちの身体は男を求めているのに、 みな男日照りであったのだがら大奥女中による情事事件がおきるのも言わずもがなである。 大奥御年寄の江島が歌舞伎役者の生島新五郎らを相手におこした事件は氷山の一角で、大奥女中が寺社の参詣を口実にして僧侶や歌舞伎役者との密会、情事は既知の事柄であり、出入りの医者や大工や植木職人などとの密通事件も度々起きていた。 大奥御広敷番(護衛)を担当していた伊賀の者も天井裏を伝って大奥の部屋へ忍び、情交を交わしていたのも周知のことであった。 「よおし、あっしも江戸城に潜り込みますよ、美女とやりたい放題だ、大奥御広敷番にも旦那は顔が利くんでござんしょう、」 「馬鹿野郎、大奥の女は気位が高いんだ、色男か精力絶倫じゃなくちゃ 相手にしてくれやしねえよ、、それに、どん兵衛に大奥の天井裏が歩けるもんか、」 さて、懐妊したくノ一の楓は伊賀の密命を受け、 「殿のお子を身籠りましてございます。なにとぞ御殿下りをお許しくだされ、 お子は必ずや徳川幕府をお支えする影の者としてお育てすることを誓い申し上げます。」 と、命乞いをした。家慶にとっても、この世に二度といない女体の楓が孕んだ子を始末することを躊躇わずにいられなかった。 「わかったぞ楓、そなたの子が徳川を守る力になってくれるのだな、姉小路に申しつけて大奥から出れるよういたそうぞ、」 徳川家慶は楓を闇に葬ることは不憫でならず、大奥の最高権力者である 上臈御年寄・姉小路に命じて、楓を密かに江戸城から去らせた。 大奥の庭には25か所の井戸があり、その井戸の一つは「いつも水が赤く染まっている」と言われていた。 望まぬ懐妊した女や行き場のない産んだ赤子を井戸へ遺棄したり、身投げする女が多かったのだ、 楓は井戸の水を赤くしなくて済んだのだった。 「ほおら、やっぱり、大奥の庭には赤い水の井戸があったじゃねえですか、、」 「その赤い井戸もな、不気味で恐ろしいと、家慶様の命で埋めてしまったということだよ、」 「臭いものには蓋でございますか、じゃあ、今度は大奥で身籠ったお女中は どこへ身投げすすりゃあいんですかい?」 つづく 朽木一空
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023年05月04日 10時30分07秒
コメント(0) | コメントを書く
[小説 桃色頭巾参上!] カテゴリの最新記事
|