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カテゴリ:笑左衛門 残日録
笑左衛門残日録 82 どくだみ草の話 ~臭い体の 日陰の身でも 役にたちましょ どくだみ草~ 拙作都都逸 隠居所の庭の隅に密かに生えていたどくだみ草が地下茎を伸ばしながら 支配地を拡大している、庭の侵略者そのものである。 まるで、徳川家康の天下統一そのもので庭のすべてを我が領土にするつもりでいるらしい。 白い花は綺麗なのだが、拙者はその厚かましい繁殖力が嫌で好かぬ草である。 もともと、日陰を好む隠棲植物で根暗な性格のはずなのだが、 だんだん図々しくなってきて陽の当たる場所にまで勢力を伸ばし、 大きな面をして、他の草花を駆逐している。 おまけに、どくだみ草の名の通り毒を溜めているというから油断はならぬ草なのである。 ~退治してしまえ!~と某が言うと、 お筆はこれほど役に立つ草はないというのだ。 毒を以て毒を制すると、昔から云われておりますように、 どくだみの毒が体に良いのでございます。どくだみは薬草で、十薬という生薬にござります。 煎じて飲めば、解熱、解毒の効果があるとされていますし、 戦国のお武家様が刀傷を負った時にはどくだみの葉を練って掏りこんで治したとも云われております。 どくだみ草を食すれば体の調子もよくなるということでございますから、 今日から試すことにいたします」 「えっ、あの臭い草を食するのか、わしの屁もかなわぬ臭い草をか」 「大丈夫、火を通せば香りも消えるので、葉の部分は煎じてお茶にしてどくだみ茶にいたします、 茹でてお浸し、ごま油でいためれば美味なお酒の友になりますわ、 それに、庭中に生えているのですから、質素倹約にはもってこいですわ、 旗本様も御家人様も広いお庭をお持ちでございますから、どくだみ草を 育てれば不況も凌げますわ、」 「うむ、毒を制するどくだみ侍か、、、」 「何しろ、この繁殖力でございますから精力抜群でございます。 あの子沢山の家斉様もどくだみを愛用していたとの噂ですよ、 旦那様の股座にも春が巡ってくるやもしれませんよ」 「しかし,あの臭いに我慢ができるかな」 「悪臭にこそ悪を征する力を持っているのでございます。 どくだみの殺菌力、抗菌力は強くて、 嫌な虫も、汚い黴も、細菌も追っ払ってくれるのです。」 「うむ、、、よし、では、拙者はもう、どくだみ草を 殲滅することはやめにしよう、 もう草どもの陣地争いに出張ることはやめよう。 だが、どくだみ草よ、一言言っておくぞ。 近頃、長州や薩摩からも毒の強い草が江戸の町に蔓延って きているということだ。 それにな、ひそかに隠れている忍草とうのもいるらしい、 充分お気をつけなされ、 ~武家屋敷 どくだみ草に 助けられ ~ 拙作 笑左衛門
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最終更新日
2024年04月01日 11時30分07秒
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