豊饒の月をみながら　　　　　　　　　　　　　　　　　　～やるなら今なんじゃないの？・・・俺！～

　　２００６年６月　僕は休みをとってある塾へ向かった

　　先方にはアポをとっていない　僕の脳天をブチ抜いたあの塾

　　突然行こうと決めて電車に乗った

　　基本こんな突発的な行動をとる人間ではない

　　熟慮に熟慮を重ねの男が電車に飛び乗る

　　「とりあえず、どっかから電話入れるか・・・」

　　電車を乗り換え乗り換え　あの塾へ向かう

　　そしてついに最寄駅へ

　　「やべえなあ～電話してねえよ・・・」

　　駅から歩いて１０分ぐらいだろうか

　　ついにあの塾の前まで来てしまった

　　と、同時に目に飛び込んできたあの塾長・・・

　　いまだにこの時の感覚は忘れない

　　生まれて初めて「気」に押されて足がすくんでしまったのだ

　　その先生は子供達と笑って話されていた

　　すごくすごく微笑ましい絵が自分の目の前に・・・

　　しかし、１歩も足が動かない

　　緊張なんかではない　本能的に感じたのである

　　「俺、見透かされる・・・」

　　その先生の笑顔の奥に今まで悩み抜き戦い続けた気が・・・

　　ほんとにそんなことがあるのか？

　　でもその時、僕は確かに気に圧倒され

　　道の反対側に渡れなかったのだ　情けない

　　「だめだ、違いすぎる」

　　勢いだけで走り抜けて思いあがっていた男と

　　日々思い悩み前へ突き進んできた男

　　同じ土俵に上がって戦おうなんて・・・

　　心の底から思いました

　　「今、この先生と会っちゃダメだ。もっともっと頑張ろう」

　　結局、この先生に会うためだけに４時間以上かけたのに

　　僕はただただ立ちすくむだけの時間であの塾をあとにしたのです

　　「こういうのを尻尾巻いて逃げてきたっていうんだな」

　　「ったく、何やってんだ俺、情けない」

　　「でも、今会ってどうすんの？その方が情けない結果に・・・」

　　急にお腹が空いてきました　そうだ何も食ってねえや

　　その塾のすぐそばには鰻屋さんがありました

　　よし、ここだ　「すいませ～ん！・・・・すいませ～ん！」

　　確実に店はやっているのに誰も出てきません（涙）

　　それから２・３分、呼び続けても応答なし

　　「そうだよな、こんなへタレに食わす鰻なんかねえよな・・・」

　　夕暮れ時、駅に向かってとぼとぼ歩きました

　　僕の人生であれほど完璧に「とぼとぼ」歩けたことは

　　後にも先にも・・・情けない

　　結局、駅ビル内でジャンクフード・・・うまくない

　　でも・・・お似合い

　　この日の帰り道、僕は数えきれない程の

　　「チキショー」を心のなかでつぶやいた