豊饒の月をみながら　　　　　　　　　　　　　　　　　　～やるなら今なんじゃないの？・・・俺！～

　　　　　≪　　名盤シリーズ　５　　≫ 

 　　　【　ＷＡＲＲＥＮ　ＺＥＶＯＮ　「Ｔｈｅ　Ｗｉｎｄ」　】

　　　酒はガバガバ飲む、煙草はバカバカ吸う

　　　そして、商業音楽に成り下がったロックをぶった斬る

　　　人は彼の事を『危険な皮肉屋』と呼ぶ

　　　多くの人を罵倒しながら、多く人に愛されたハードボイルド

　　　２００３年、彼の最新作は制作の段階で彼の遺作となる事が分かっていた

　　　彼の体は末期の肺がんに侵されていた

　　　それでも、彼は飄々と、しかしながら渾身のちからを込めて作品を作り上げた

　　　あれだけ、多くの人達に毒づいたのに

　　　彼の遺作には、多くのミュージシャンが駆けつけ参加した

　　　親友ジャクソンブラウン　トム・ぺティ　ドン・ヘンリー

　　　ブルース・スプリングスティーン　ライクーダー　などなど

　　　ワールドツアー中だったボブディランは毎夜ジヴォンの曲を演奏した

　　　僕は店頭に並ぶこのアルバムを手に取るまで、彼の事を全く知らなかった

　　　人は自分がもうすぐ死ぬと分かっていて、それでもまだ己の仕事を全うできるのか

　　　驚いた事に、彼が末期の肺癌で余命３ヶ月を宣告されたのは２００２年９月

　　　このアルバムが発売された２００３年８月２７日　彼はまだ生きていた

　　　このアルバムにはディランの『天国の扉』が収録されている

　　　もしかしたら、彼よりも極上の歌い方で歌うアーティストがいるかもしれない

　　　もしかしたら、彼よりも極上のプレイで演奏するギタリストがいるかもしれない

　　　でも、おそらく命を賭けてこの曲をアルバムに吹きこんだ人は彼しかいないのではないか

　　　そして、アルバム発売を見届けるかのように

　　　２００３年９月７日、彼は静かに息を引き取った

　　　孤高の皮肉や　ウォーレン・ジヴォン

　　　皮肉な事に彼があれほど嫌がった商業的ヒットをこのアルバムは記録する・・・