カテゴリ:音楽/その他
続き。
森 ラジオ教養講座「プログレッシヴ・ロックの傾向と発展」をテーマに学んでいきます。講師は岩本晃市郎先生です。どうぞよろしくお願いいたします。 岩 よろしくお願いします。 森 まず岩本先生、そもそもプログレッシヴ・ロックとはどんな音楽と言えるのでしょうか。 岩 えー…難しいですねこれは。ロックであってロックでないというですね。答えを出すためには何時間もかかってしまうんじゃないかという。 山 ロックのようでロックでない。ベンベン。みたいな。 岩 はい。 山 ここで言うロックというのは? 岩 ロックというのはブルースというか、そういうものを中心としたロックンロールから発展した音楽なんですけども、プログレッシヴ・ロックというのは、ロックというのは元々クラシックに対してのアンチテーゼみたいなものがあったんですけども、そのクラシックを取り込んじゃったんですよね。 山 なるほど。 岩 それで別の方に発展していってしまった。だからロックなんだけどロックに留まらない音楽。っていうのがプログレッシヴ・ロックだと思うんですよね。 山 なるほどね。変わり者の音楽といいますか。 森 そうですね。 岩 そうですね。69年から76年くらいかな、このくらいがだいたいプログレの時代というか、73年ぐらいを頂点としてると思うんですけどね。 森 その、いわばロックの外の価値観を成り立たせているというものとは何なんでしょうか。 岩 そうですね、三位一体説というのがありましてですね。 山 三位一体説? 岩 長い・重い・巧い、というですね、この3つの要素。 山 どっかの牛丼屋さん的なね。 岩 これがプログレの特徴と言えば。 山 巧くないのも時々ありますけどね。 岩 そうですね、巧くないのもあるんですけど、この巧いっていう言葉の意味の中にはテクノロジーを上手に使うという。 山 なるほどね。 岩 プレイだけではなくて、当時の新種の機器を巧く使ったスタジオワークっていうのも入っていると思うんですね。 森 ではその長い・重い・巧いの最初の長いですけど、まあ… 山 曲が長い。 森 そのまんま。 岩 曲が長いんですよね。 山 “原子心母”みたいなね、20分、30分当たり前みたいな。 岩 そうですね、はい。 山 なんで長くなるんですかあれ? 岩 なんでですかねえ? 山 なんで長いんですかあれ? 岩 やっぱりクラシックの手法とかそういうのを取り込んでるんで。あとテーマですね。例えばロックンロールは恋愛の歌とか、誰が誰を好きとか、3分間でシングル中心だったんですけど、それがテーマが宇宙とか自然とか、精神世界とかいう風になってくるとですね。 山 大きく出ますからね。 岩 3分間で収まんなくなってくる。ちょうど当時ビートルズが「サージェント・ペパーズ」を出して、シングルの時代からアルバムの時代になっていったんですよね。そういう意味で言うと、長くなって先ほど言われたように片面1曲というのも出てくるんですね。 森 長い中でも最長のものって言うとどれくらいのものなんですか? 岩 やっぱりそうですね、一番長いって何でしょうね…“原子心母”なんかも長いですし、AB、当時はアルバムでどのくらい長いかって、どのくらい入るかってあるんですけども、やっぱりイエス、ピンク・フロイド、このあたりがやっぱり長いですよね。 山 イエスの「海洋地形学」が、あれを全部が1曲と考えると。 岩 そうですね。一番長いかもしれませんね。 山 4枚、えー、2枚組の両面ってことですかね。 岩 そうですね。CDの時代になるとマイク・オールドフィールドがCD面全部1曲という曲を出しますけどね。“アマロック”という曲出しますけども、それは70分以上ですね。 山 なるほどね。 森 だけど長ければいいっていうわけでもないですよね。 岩 そうですね。長ければいいってわけじゃないんですよね。 山 短い曲もありますよ。 岩 例えば短い曲でプログレファンならおなじみの曲、こんな曲があるんですけど。 03. 5% For Nothing(邦題:無益の5%) / YES ![]() 山 はい。これ途中でぶった切ったわけではないですよね。 岩 そうですね。 山 これで全曲。 岩 そうですね、35秒。この中にすべて…現代音楽の要素とかクラシックとかロック全部入ってますね。 山 イエスの“無益の5%”ですか、邦題。“5% For Nothing”ってやつですけどね。 岩 そうですね。 山 「こわれもの」に入っている曲ですよね。 岩 そうですね、はい。 山 一方じゃこのね、“海洋地形学”みたいに80分ぐらいの曲もやる一方35秒もやる。これ、「こわれもの」はわりと短い曲多いですよね。 岩 そうですね。 山 1分台の曲、何曲か入ってますけども。 岩 そうですね。 山 その中にこう、詰め込むというか。必ずしも長いとは限らない。 岩 そうですね。 森 では岩本先生。続いての要素の重いとはどういうことなんでしょうか。 岩 やっぱりそうですね、当時の時代の閉塞感とか色々あるんですけども、例えばキング・クリムゾンというバンドが精神世界のことを歌ったりとか。ま、イエスは大自然。ピンク・フロイドは「狂気」というアルバムで、それもまた精神世界のこと歌ったりとか。あとはそうですね、ジェネシスというバンドがちょっと寓話的なマザーグースの世界、ちょっと怖いですね…という感じの歌を歌ったりだとか。 山 邦題が「怪奇骨董音楽箱」という。 岩 そういう。邦題がそうですよね。ピンク・フロイド。 山 おどろおどろしい。 岩 「Dark Side Of The Moon」が「狂気」だったりとか。「Close To The Edge」が「危機」だったりとかね。そういう題名も多いですよね。 山 まずテーマが重い。 岩 テーマが重いですよね。 山 音も重いですよね。 岩 確かに音も重い。 山 重ねますからね。 岩 そうですね、重層的なんですよ。ギター、ドラム、ベース、キーボードが例えばオルガン1台でやっていた時代から、もうキーボードだけでも10台ぐらい使ったりとか。音をどんどんどんどん重ねていって分厚くなっていくんですよね。だからこう、なんて言うんですか、シンフォニックにどんどん広がっていくというか。 山 うん。テーマが重くて音が重いということですよね。で、また暗いとも言われますよね。 岩 そうですね。まあ暗いは確かに暗いとも言われますけども、僕は深いと呼んでますけどね。 山 いいこと言いますね。なるほど。 森 プログレ三位一体説。最後の要素、巧い。ですよね。やっぱりプログレというと超絶技巧のイメージ。 岩 そうですね。やっぱりテクニカルではないとというのがあって。プログレ的な音を表現するには技術力が必要だ。そういう意味で言うとイエス、ジェントル・ジャイアント。もう彼らは本当にテクニックが凄いですよね。もちろんジェネシスもELPも皆さん巧いですけども。とにかく楽器が巧いというのがプログレの特徴の1つですね。 山 よく言われることですけどピンク・フロイドがわりと簡単にコピーできるというのは当時言われましたけど、このあたりは。 岩 彼らはですね、巧いというのは、僕の考えではスタジオワークが巧いんですよ。つまりテクノロジーの使い方が巧い。例えばSEを使ったりとか、楽器の演奏力ではなく。 山 演奏力ではなく。 岩 実はね、演奏力は実は本当は巧いんですけども、彼らはそれをひけらかさずに楽器とかテクノロジー、スタジオワークで音を作っていたという意味で言うと、巧いというか巧みですよね。 山 凄さがわかる曲ってあります? 岩 フロイドのですね、この曲をちょっと聴いてみてください。 04. Time / PINK FLOYD ![]() 山 “タイム”ですよね。 岩 “タイム”ですね。 山 アルバム「狂気」。 岩 「狂気」。 山 日本のオリコンで1位になった。天地真理のアルバムを抜いて1位になったところの「狂気」。 岩 凄い、もう世界的なベストセラーですよねこれは。 山 「Dark Side Of The Moon」。 岩 やっぱりこれを聴くと、彼らは前例がなかったわけですよ。例えばモーグ・シンセサイザーが出てきたりとか、メロトロンという楽器が出てる。メロトロンというのはテープであらかじめフルート奏者、ヴァイオリニストが録った音を再生ヘッドに乗っけて、それをキーボード、トリガーとして再生していたわけですね。つまりアナログのサンプラー。 山 長い音が出ないんですね。 岩 8秒しかないんですね。こういうものとかをこう、どうやって使えばいいかという、前例のない中でこういうことを作り上げた。っていうのは彼らは凄いと思いますね。 山 私覚えてますけども、この「狂気」なんですけども、これも時代のあだ花と言って今はもう忘れられている4チャンネルステレオというものが。 岩 ありましたね。 山 当時流行りまして。 岩 流行りました。 山 スピーカーが4つあるステレオ。 森 ぐるぐる回るのですか? 山 これ、ピンク・フロイドの「狂気」は4チャンネル対応で“走り回って”っていう曲だとぐるぐるぐるぐる足音が回るんですよね。そういうこともいち早く取り組んだのがピンク・フロイドっていう。 岩 このアルバムってのは、あとはオーディオチェック用によく使われたんですよね。だから聴くというのはいろんなものが入っているんで、これをかけてオーディオの性能を測ったという。 山 なるほどね。 岩 それほどいろんな技術が、当時の最先端の技術が入っているアルバムですね。 続く。
Last updated
2011/10/13 09:19:43 PM
コメント(0) | コメントを書く
[音楽/その他] カテゴリの最新記事
|
|