私たち消費者がIPadなど電子書籍端末に期待するのは、やはり値段の安さでしょうが、実際ジャンプやサンデーなどがもし電子書籍化として通常の紙媒体と同じ日に発売、しかも紙より安く、なんてことになるのは不可能だと思います。
というのは、ご存知の方も多いかと思いますが日本の週刊少年誌、20人以上の作家が毎週アレだけの原稿を書いて、一冊250~300円程度というのはどう考えてもおかしい。薄利多売ではありません。雑誌の売り上げだけでは完全な赤字です。で、その赤字は単行本の売り上げで回収している訳で。
ですがもし電子媒体になったら、その情報はユーザーが劣化しないまま保存できる。雑誌のように読み捨てしないで済む&まとめて取っておけば単行本を買う必要は無い。
つまり、これまで赤字を補填していた単行本の売り上げ分を雑誌に加算しなければ、漫画家も出版社もやっていけなくなるという・・・ただでさえ漫画家の中には原稿料だけではアシスタント代金を払ったら赤字で単行本の売り上げでなんとかしている、などというのが現状なのに。
以前に「サルでも描けるマンガ教室」でおなじみ編集家・竹熊健太郎さんが「もし、雑誌の売り上げだけで原稿料を回収しようとするなら、メジャー雑誌であっても今の4倍の価格にしないとやっていけない」という話を聞きました。それに対して紙代や流通、書店の儲けなどネット化によってカットできるコストは3割程度。こうなると雑誌より高くなるという・・・しかし、「ネットだから紙と違ってコストが掛からず安い」という思考のあるユーザーにとっては納得がいかないでしょう。
日本ではマンガ雑誌は「安すぎる」んですよね。だから流通コスト削減でさらに安くなる、なんていうのは過去の作品とか、そういうものだけです。
どんなに優れたシステムも、中に入れるデータを作る人が生活できない状況で消費者だけが利益を受けられる、なんてことはありません。
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