吾妻ひでおさんの訃報に、「ああ、一つのオタクの歴史がまた」と感慨深いものがあります。
吾妻ひでおさんというと、昨今はベストセラーにもなった「失踪日誌」が取り上げられますけど、私のような古いオタクにとってはいわゆる「ロリ絵の走り」みたいな人で。というか、このロリコンとオタク、そして同人を結びつける結節点みたいな作家さんである印象です。
現代マンガの創成期、黎明期のそれこそ手塚先生、藤子不二雄先生の時代というのは「漫画は子供たちが読むものであるから健全であるべし」というのが底辺にあった気がします。が、いわゆる「漫画を見て育った漫画家」という世代の中で、彼のような今も続く美少女系作家、えっちな作風を肯定的に描いて人気を得る作家の急先鋒であり、その彼の切り開いたいわゆる「マニアック、狭いニッチな市場、だけど好きな連中が集まるオタク的漫画」という、今のコミケでやっている同人的作風を商業で広げた革命児的な人だと。
もっとも、「失踪日誌」にも描かれていますが、本人は漫画に悩み、苦しみ、失踪やアルコール依存などにも陥る。流れのはやい業界で生き残る難しさも。
今回の訃報に、漫画家の同業者の方が多く哀悼のコメントを寄せています。それだけ多くの漫画家に影響を与えた作家さんであることを。
改めて「偉大なオタク」の先輩に敬意を。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう