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佐遊李葉  -さゆりば-

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2013年05月13日
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カテゴリ:きりぎりす
 堀河はしばらく黙っていたが、しびれを切らせて前簾(まえすだれ)の隙間から外を見た。

 桜子は頬を紅潮させながら、牛の手綱を引っ張っている。牛車の傍らを歩いていた資通は、老いた細い肩で牛車の轅(ながえ)を持ち上げようとしていた。堀河は桜子に向って言った。

「どうしたのじゃ」

 桜子は額の汗を拭いながら、申しわけなさそうに俯いた。

「ぬかるみに牛車の車輪が埋まりこんでしまって。どうしても抜けませぬ」

 堀河も前簾から身を乗り出して、車の下を覗いてみた。

 このところの雪のせいで地面が緩んでいるのか、道には深い轍(わだち)の跡が刻まれている。その中でも今堀河の牛車が止まっている辺りは、薄汚れた雪が隅にまだ溶け残り、泥田のように広くぬかるんでいた。

 桜子はなおもしばらく牛を叩き、資通と一緒になって膝近くまで泥に埋まりながら轅を引っ張っていたが、やがて諦めたように溜め息をついて言った。

「申しわけありませぬ。これ以上は、我らの力では何とも。里に降りて、村人を呼んで来る他ありますまい」

 だが、堀河は獅子王の無残な姿を人目に晒したくなかった。それに、堀河の山荘はもう目と鼻の先だ。堀河はしばらく思案していたが、側でなお諦めずに車輪を持ち上げようとしている資通を呼び寄せて言った。

「そなた、獅子王を担げるか?」

 資通は疲れ果てたような顔で堀河を見上げたが、それを聞くと急に胸を張って頷いた。

 堀河は腕の中の獅子王をしっかり抱えると、桜子の手を借りてその重い身体を引き摺り、牛車の後簾の下に差し出された資通の背に苦労して預けた。

 獅子王は身体が大きい上に、すっかり意識を失っている。資通はずしりとした獅子王の重みに押しつぶされるようによろめいたが、それでも歯を食いしばって持ちこたえた。そして、ゆっくりとではあるが、一歩一歩足を踏みしめて歩み始める。

 桜子の手に縋って牛車を降りた堀河は、袿の裾を絡げると、資通の先に立って傍らの竹林の中に入って行った。


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↓これが一般的な牛車です。牛車の前側に下がっているのが前簾。その奥に、十二単をまとった貴婦人の姿が垣間見えますね。轅は牛車の前方に伸びている長い棒状のもので、これに牛をつなぎます。ちなみに、牛車は定員四名とされていますが、そんなに乗ったら正直ぎゅうぎゅう(^^ゞ しかも、スプリングのない車体で凸凹の道を行くわけですから、優雅そうに見えて牛車はたいそう乗り心地の悪いものだったようです。

  • CIMG0794.JPG






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最終更新日  2013年05月13日 15時54分32秒
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