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カテゴリ:遠き波音
まさか、あの親切で頼もしい兵衛佐が。あれほど吉祥と仲睦まじく過ごしていたのに。
それに、あの吉祥を捨てることができる男などいるだろうか。 乳母の話だけでは心もとないので、深夜になってようやく戻ってきた父を捉まえると、多聞丸はさりげなく尋ねてみた。 「父上、隣の中務大輔様の婿君になられた兵衛佐殿は、もはや隣にはおいでになっていないのですか」 父は難しい顔で眉をしかめながら言った。 「その話を誰に聞いた」 「乳母でございます」 「あのおしゃべりめ。そんな話を子どもにするとは、後で叱っておかねばなるまい」 多聞丸は少しむっとしながら言葉を返した。 「私はもう子供ではございませぬ。年が開けたら十五歳になるから、そろそろ元服させようと、この間おっしゃってくださったではありませぬか。それに、隣家の方々にはずいぶん可愛がっていただきました。乳母の話が本当なら、あまりにもお気の毒で」 ![]() ↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013年11月11日 16時30分04秒
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