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カテゴリ:羅刹
昨夜、遅くまで頼通と策を練(ね)った能季は、夜が明けるのを待って小一条院へ赴いた。
頼通が用意してくれた貴重な唐渡りの香炉を献上するという名目で斉子女王に会った能季は、ことを全て斉子女王に打ち明けて、その助力を乞うたのである。 果たして斉子女王は応じてくれるだろうか。 そのような危険な役目に、斉子女王は恐れて拒否なさるのではないか。 能季はどきどきしていたが、斉子女王は黙って最後まで能季の話を聞くと、ただあっさりと頷いた。 どうしても師実を助けたいという能季の願い、父親としての悲痛な頼通の心情を理解してくださったのだろうか。 斉子女王は能季から事の段取りや口上をもう一度確認しただけで、すぐに今からここを出て小八条第へ向かおうと言ってくれたのである。 姫宮の急な外出に驚いた母君の瑠璃女御には、すでに頼通からの懇(ねんご)ろな文が用意されていた。 内裏の極秘の用事のために斉子女王の力を借りたいから、自分が責任を持つので女王を預からせて欲しいというものだ。 最高権力者である関白からの申し出では、瑠璃女御も嫌とはいえない。 能季はその文を女御に差し出しながら、改めて頼通の用意周到さと権力に舌を巻いたのであった。 ↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年01月17日 14時34分40秒
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