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佐遊李葉  -さゆりば-

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2016年02月14日
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カテゴリ:羅刹
 やがて、辺りに夕闇が満ち始めた。

 明かりをつけるよう、人を呼ぼうかと能季が思案していると、果たして女房らしい人影と明かりが一つ、向こうの渡殿を渡ってくるようだった。

 いや、その後ろには、もう一つ誰かの黒い影がある。

 その丈の高い影に、能季ははっとして身構えた。

 斉子女王も人が近づいてくるのに気づいて、いつの間にか顔を上げ居住まいを正している。

 女房は庇の間に入ると、母屋との仕切りの御簾際(みすぎわ)に置いてある燈台に火を移して周った。

 俄(にわ)かに辺りは明るくなる。

 その明かりの中に、僧形の男が一人立っていた。

 数珠を握る骨ばった手に、剃ったばかりと見える青々とした頭。まだ着慣れないらしい僧衣の中で、痩せた身体が泳いでいる。

 だが、その顔を目にしたとたん、能季は驚いて目を見張った。

 すっきりと弧を描いた眉の下の、睫(まつげ)の濃い切れ長の瞳。細い鼻梁は高く整い、薄い唇は仄(ほの)かに赤く潤(うるお)っている。

 色白の肌は滑らかで、額にも頬にもほとんど皺らしい皺はない。

 その眼差しには奇妙な強い光があって、どこか人に魅入るような艶な感じさえした。

 老人、というには、あまりにも若々しく生々しい。

 能季は自分の父である頼宗の顔を思い浮かべた。

 確か同じ年くらいのはずであり、若い頃どちらも美貌で持て囃されたそうだが、二人の様子はあまりにも違っていた。

 父の方は、長い年月の間に多くの苦渋や悲しみにさらされながら、それらを得心と諦めの中で静かに受け入れ、やがて穏やかに晩年を迎えた人の平安があった。

 だが、今目の前にいるこの男は、そうではない。

 まるで、若く美しい時代のまま年を取らず、それでいて内部は棺の中で朽ち果てた死人のように腐り爛(ただ)れている。

 そんな感じがした。


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最終更新日  2016年02月14日 13時54分10秒
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