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佐遊李葉  -さゆりば-

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2016年06月03日
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カテゴリ:羅刹
 怨霊はじっと、自分の手の中で揺らめいている真紅の炎を見つめていた。

 怨霊の手が動く。

 道雅の魂を、力を込めて握り潰そうとするかのように。

 だが。

 やがて、その手は炎を消し去ることなく、逆にそっと両の手の中に包み込んだ。

 そして、我が子でも愛しむような優しい手つきで、その炎を胸に抱き締める。

 能季は驚いて、怨霊の姿を見つめていた。

 怨霊はそのまましばらく炎の中に佇(たたず)んでいたが、やがてゆっくりとその姿を消していった。

 残された炎はしばしの間大宮川の川面にたゆたっていたが、それもいつの間にか暗い水底へと沈んでいく。

 ふと気がつくと、能季の身体はすでに自由になっていた。

 隣の兵藤太が、すぐに庇(かば)うように能季へ駆け寄ってくる。

 心配げに顔を覗き込む兵藤太に、能季はただ無言で頷くだけで、まだ視線を川面から外せずにいた。

 目の前の黒い溜池のように澱(よど)んだ水の面に、何かがふわりと浮かび上がってくる。

 それは、澄んだ薄紫色をした小さな炎だった。

 その炎はふわふわと戸惑うように能季の周りを飛び交(か)ったかと思うと、急に高く舞い上がり、そのまま東の虚空へと飛び去っていく。

「三条の……師実様のお屋敷の方ですね」

 安堵の溜め息とともに、兵藤太の低い声が耳元へ聞こえてくる。

 能季はその声に頷き返しながら、炎の飛び去って行った方角をいつまでも見つめ続けていた。


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最終更新日  2016年06月03日 15時17分22秒
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