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佐遊李葉  -さゆりば-

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2016年09月08日
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カテゴリ:羅刹
 月光に浮かぶ兵藤太の顔を眺めながら、能季はふと真砂(まさご)のことを思った。

 どれほど思っても、真砂の想いが兵藤太へ受け入れられることはないのだろう。

 能季は真砂が哀れになった。

 だが、兵藤太の想いはそのまま自分自身のものでもあることに、能季は気づいていた。

 誰かに心と魂を奉げてしまったならば、その想いは生涯変わることはない。

 その誰かが、自分の前から姿を消し、二度と再び会うことはかなわないとしても、やはりその面影は心の奥底から決して失われることはないのだ。

 だが、それはどれほどの苦悩をもたらすことだろう。

 脳裏に焼き付いた幻に過ぎない面影を抱き締め、僅かな思い出を胸の中で手繰(たぐ)りながら、心は次第に高まる恋慕と愛執に惑(まど)い焦(こ)がれる。

 まるで、砂漠にたった一人打ち捨てられた者が、食物と水を求めて喘(あえ)ぎ彷徨(さまよ)うように。

 その癒(いや)す術のない餓えと渇きは、人の心を蝕み、やがて胸を掻(か)き毟(むし)らんばかりの苦痛でのた打ち回らせることになるのではないか。

 ああ、そうだ。

 道雅が人を喰うのは、その餓えと渇きを、何か別のもので満たそうとしているからなのだ。

 心が餓え渇いている時、人は何かを口にすることで、腹だけでなくその心まで満たすことができる。

 ほんの僅か、ほんの一時のことに過ぎないけれど。

 道雅はあの皇女を喰らった時、それを知ってしまったのだ。

 そして、当子内親王を想う心の餓えと渇きに耐え切れなくなると、また人を喰わずにはおれなくなった。

 それはおそらく、生きている限り繰り返される。

 いや、もしかしたら、死んだ後も。


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最終更新日  2016年09月08日 10時39分13秒
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