前売り券を買っていたのに忙しすぎて観に行く時間が作れなかった山田洋次の最新作『おとうと』。やっと今日観ることができた。これは『男はつらいよ』を徹底的にリアルに作り直した作品だった。いわばセルフリメイク。というより、むしろターミナルケアを切り口に『男はつらいよ』の完結編を作った、もっとストレートに言い換えると車寅次郎の末路を描いたような映画だった。
寅さんは最終作『紅の花』でリリーと加計呂麻島へ旅立つが、しばらくして震災直後の神戸市長田区へ姿を現したところで終わっている。結局リリーとうまくいったのか、いかなかったのか。たぶん後者だろう。渥美清の逝去によって残念ながらこれが車寅次郎の最後のシーンとなったが、その後も旅を続けていることは現実的に考えにくい。震災から17年。そろそろ寅さんもいい年齢のはず。では寅さんの最後(寅さんの死)ってどんな感じなんだろう。誰もが考える疑問に対して、きちんと回答を示したのが『おとうと』だと思った。
姉(吉永小百合)と弟(笑福亭鶴瓶)の関係性やエピソードは、兄・寅次郎と妹・さくらの再現そのまんまだった。「寅さんの最後ってこんな感じなんだろうなあ」。そんなことを感じさせるストーリー。真ん中くらいから涙が止まらなかった。寅さんの最後もそうなのだが、「そういえば俺も姉ちゃんとケンカしてるなあ」とか「独りの生活も気楽だけどこんな風に死にたくないなあ」とか「親父の最後もこんな風になるのかなあ」とか、自分のことと重ねてしまうと余計に涙が止まらなくなってしまった。
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