ビートルズの「レヴォリューション」(Revolution、革命)は3つの「レヴォリューション」(Revolution)バージョンがある。
1つは、通称ホワイトアルバムの「レヴォリューション1」(Revolution1)で、「暴力革命の仲間に入れるなよ (count me out)」と歌った直後に「加えろよ (in)」と歌われている。
2つめは、「レヴォリューション9」(Revolution 9)で、ホワイトアルバムのD面の5曲目に入っている。音楽の革命として製作されるが、聞いてもよくわからない。
そして、3つめは、「レヴォリューション」(Revolution)で、『パスト・マスターズ Vol.2』(PAST MASTERS VOLUME TWO)に入っている。
『パスト・マスターズ Vol.2』(PAST MASTERS VOLUME TWO)の「レヴォリューション」(Revolution)は、、「暴力革命の仲間に入れるなよ(count me out)」としっかりoutと歌いきっている。
その録音時期を見てみると、レボリューション1が、68年5月30、31日、6月4日、21日で、レボリューションが68年の7月10~12日となっている。
ビートルズを聴こう」の里中哲彦さんと、遠山修司さんの対話では、ジョン・レノンの革命に対するスタンスの変化を指摘する。
1968年は、政治の季節でもあった。
ややこしいのが、その頃別に作られた、プロモーション・フィルム・バーションでは、outと歌ったあとに、inを加えている。
まだ迷いがあったが、社会的影響力のあるジョン・レノンは確実に「非暴力の平和愛好者」を目指し始めていた。
気が付くのは、いままで、そこまで、しっかりと英語の歌詞を捉えていない自分がいた。
そして、時代背景や、こうしたマニア、専門家2人の対談で、見えなかった彼らのコンサート移動生活の中から生まれる思いつきのような奇跡の名曲たちの姿が浮き彫りにされていく。
そして、彼らの創作活動や意識の変化も曲に埋め込まれている。
中山康樹さんの「これがビートルズだ」もかなり面白いのだが、河合塾英語科専任講師もされる里中哲彦さんとリバプール(スカウス)に7年住んだ遠山修司さんお二人の細かな英語ニュアンスや訛りチェックから見えてくる曲の意味付はまた、さらに異なるビートズ理解の地平に誘われる。
歌われる内容も多岐に変化する。
売れる曲が求められる音楽産業の中で、当時の売れっ子アーティスト、ザ・ビートルズのジョンやポールは平気でインド経験や、アップルレコード設立のムカつくまわりの人達の事を歌でこき下ろす。
正直な気持ちを歌にして芸術にまでまとめてしまう。
例:
「ザ・コンティニューイング・ストーリー・オブ・バンガロー・ビル」 (The Continuing Story of Bungalow Bill) は、メンバーがマハリシ瞑想修業中、あるアメリカ人男性が退屈しのぎに母親とゾウに乗って虎刈りに行った自慢話にムカついて作られる。
「セクシー・セディー」 ("Sexy Sadie") は、アシュラム(瞑想道場)で、導師マハリシが、ミア・ファロー(映画女優)にしたかも知れないけしからぬ行為の話から生まれる。
「ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー」(You Never Give Me Your Money)は、ポールが、アップルレコード設立のときに、敵視したアメリカ人会計士アラン・クラインを皮肉る。出だしの歌詞は、金をよこさず、変な書類ばかり持ってくる、と歌われる。なのに荘厳さを感じる曲になっている。
歌われている歌詞とその時のメンバーの状況から、さらに歌の意味をよく捉えることができる。
改めて、感情をむき出しにした彼らの創作活動がすごかったことに気が付く。
2015年にまた、ザ・ビートルズを聴きなおす。新しい音が生まれる快感をチェックする。