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テーマ:本のある暮らし(3222)
カテゴリ:日々の読書(ミステリー)
蔵書票というものをご存知だろうか。自分の蔵書であるということを示すために、本に貼るものであり、版画の技法を使って作られていることが多い。日本は印鑑文化であるため、あまり普及しなかったが、西洋では割とポピュラーなものであり、美術品としてコレクションの対象にもなっているらしい。
「京都吉田山殺人事件」(木谷恭介:徳間文庫)は、この蔵書票をめぐって起きる殺人事件についての話である。 主な登場人物は以下の3人。 魚津 :京都府警のこわもて刑事、ニックネームはオコゼ 宮之原:警察庁広域捜査室警部、なぜか京都在住 小清水:警察庁広域捜査室長兼長官官房秘書課長、美貌の女性キャリア警察官 この3人が、事件を解決していくという筋書きである。 題名にある吉田山とは、旧制三高時代から京都大学のシンボルとなっている山である。一昨日の「紅萌ゆる」で紹介した三高逍遥歌にも「月こそかかれ吉田山」と歌われている。しかし事件は吉田山で起きているのではない。殺人の舞台は、北白川の資産家の敷地内と洛西の大蛇ガ池(本当にこんな池があるかどうかは知らないが)というところである。吉田山は、一応は出てくるのであるが、どうしても吉田山で無いといけないという必然性はない。どういう意図があって、このタイトルにしたのであろうか。 この小説で起こった殺人事件は、百武という資産家の蔵書コレクターが愛人の機嫌を取るために、世界に1枚しかない蔵書票の3点セットをプレゼントするという約束に端を発している。しかし、コレクター心理を考えると、そのような価値のあるものを、価値の分からないものに、ほいほいと譲る約束をするということは不自然さを感じる。 また、宮之原は、ポアロやホームズも裸足で逃げ出すという触れ込みであるが、大した証拠も示さずに、推理らしきものをご披露したら、犯人が勝手に恐れ入っているという感じで、推理の深みに欠ける気がする。 結論: 蔵書票についての勉強にはなった。ミステリー小説としては??? 「京都吉田山殺人事件」(木谷恭介:徳間文庫) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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