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カテゴリ:日々の読書(ミステリー)
度重なる会計上の不祥事を背景に、米国のサーベンス・オクスリー法(SOX法)に倣って整備されたいわゆるJーSOX法が、今会計年度から適用になり、上場企業は、この対応に追われているものと思う。この制度においては、公認会計士が、「経営者が実施した内部統制の評価」について監査を行うことになっている。 この公認会計士、今は制度が変わったが、かっては、2次試験に合格して会計士補となり、一定の実務経験を積んだ後に3次試験に合格すれば、晴れて資格を手に入れることができたのである。もちろん本人の能力と努力によって、いつ合格できるかは違ってくるので、若くして合格するものもいるし、何年も苦労して栄冠を手に入れるものもいる。「女子大生会計士の事件簿(DX.1)」(角川書店/角川グループパブリッシング)は、全国最年少で会計士2次試験に合格し、今でも現役の女子大生という藤原萌実を主人公にして、「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 」でも有名な山田真哉氏が、会計の初歩的な知識を伝えるために小説仕立てで書いた会計ミステリーと言っても良い作品である。ちなみに萌実は、ものすごくかわいいという設定だ。事件簿となっているが、別に殺人事件などは出てこず、あくまでも会計上のトリックあばきなので、念のため。扱われているのは、次の7つの事件。 ○《北アルプス絵はがき》事件:裏金作りのからくり関する「UK」の謎。 ○《株と法律と恋愛相談》事件:会社乗っ取り工作に関する話。 ○《桜の頃、サクラ工場、さくら吹雪》事件:お花見監査とは? ○《かぐや姫を追いかけて》事件:かぐや姫に恋い焦がれと男の、架空会社を使った粉飾。 ○《美味しいたこ焼き》事件:閉鎖した普通預金口座に、なぜか1000万円もの預金が。 ○《死那葉草の草原》事件:死那葉草の謎とは? ○《ベンチャーの王子様》事件;SPCを悪用した会計のからくりとは? この作品で、萌実の部下としてペアを組んでいるのが会計士補一年目の柿本一麻。こちらは、現在二十九歳、勉強を始めて7年目にやっと2次試験に合格したという苦労人だ。萌実の自由奔放なキャラに振り回されているが、萌実の方が専門知識が豊富なことと、どうも惚れた弱みもあるようで、下僕キャラを演じているのがなんとも面白い。楽しみながら、会計に関する知識が知らず知らずのうちについてくるので、会計の勉強を始めようという方などは、手始めに読むのには最適であろう。 ○応援クリックお願いします。 ●「女子大生会計士の事件簿(DX.1)」(山田真哉:角川書店/角川グループパブリッシング) 風と雲の郷 別館「文理両道」はこちら 風と雲の郷 貴賓館「本の宇宙(そら)」はこちら お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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