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テーマ:本のある暮らし(3187)
カテゴリ:日々の読書(その他小説)
「 ライ麦畑でつかまえて」(ジェローム・デーヴィド・サリンジャー/野崎孝 :白水社)、とても分かりにくい本であるとともにすごい本である。この小説がサリンジャーによって発表されたのは1951年。その後の累積発行部数がなんと全世界で6000万部。近年でも全世界で毎年25万部が売れているという、大ベストセラーでロングセラーなのである。
○「 ライ麦畑でつかまえて」(ジェローム・デーヴィド・サリンジャー/野崎孝 :白水社) 内容は、大人の目から見ればなんということはない。主人公は、ホールデン・コールフィールドという大人になりかけのハイスクールの生徒。通っていた学校を、成績不振で退学になった彼が、寮を飛び出して家に帰るまでの数日間をニューヨークで彷徨うという物語である。彼の眼に映った大人の世界に蔓延する欺瞞や疑問も持たずに大人になっていく生徒たちへの揶揄を、いかにも若者言葉といったシニカルで誇張的な語り口で描いている。たぶん、大人から見れば、子どもが、うだうだ、ぐじぐじと言っているだけとしか思えないような内容なのだが、ジョン・レノンを射殺した犯人や、レーガン元大統領を狙撃した犯人も愛読していたと言われており、当時の若者たちに与えた影響は計り知れない。 原題は、「The Catcher in the Rye」、この他にいくつか翻訳があり、「ライ麦畑の捕手」や「キャッチャー・イン・ザ・ライ」といった邦題が付けられている。この原題は、妹のフィービーに、何になりたいのかと尋ねられた時に、「たくさんの子供たちが遊んでいる広いライ麦畑で、あぶない崖のふちに立って、子どもたちが落ちそうになったら、それを捕まえる者になりたい。」という意味のことを答えたことからきている。ホールデンが、こんなことを思いついたのは、子どもが歌っているのを聞いた「ライ麦畑で会うならば」を「ライ麦畑でつかまえて」と思い違っていたことによるようだ。なお、「ライ麦畑で会うならば」はロバート・バーンズの詩に曲をつけたもので、曲の方は「故郷の空」と言う題でも有名である。あの「だれかさんとだれかさんが麦畑」と歌われている曲と言えば分かると思う。彼が、なぜ「ライ麦畑で子供を捕まえる者」になりたいのか、その理由は明記されていないが、大人になって、欺瞞の世界に飛び込むことに対する反発が言わせたことなのかも知れない。 ○他の人の読書ブログがたくさんあります。 風と雲の郷 別館「文理両道」はこちら 風と雲の郷 貴賓館「本の宇宙(そら)」はこちら お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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