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時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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June 22, 2010
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 飲食関係のビジネスを行おうとすれば、どうしても、客の集まりやすいところを狙ってと考えがちである。しかし、タヌキとキツネ、時々クマしかこないような山の中に個人で開業したワイナリーとレストランが思いの他繁盛しているという。長野県東御市の北側に位置する標高850メートルの山の上に建っているというヴィラデストワイナリーである。「里山ビジネス」(集英社)は、そのワイナリーのオーナーである玉村豊男氏が、自らのビジネスに対する考え方を世に問い、成長というものが前提になっている経済社会というものに一石を投じた書である。

○「里山ビジネス」(玉村豊男:集英社)



 山中の、人気のない場所に、不安がいっぱいで始めた、ワイナリー・アンド・レストランだが、蓋をあけてみれば、思いのほか好調であり、初年度から単クロ(単年度黒字)を出すことができたようだ。著者は、本を出したり、絵を描いたりしており、まるっきりの無名な人というわけではない。初年度の好調さは、彼の店が、マスコミにも何度か紹介されたことが大きかったのだろう。しかし、有名人の開いた店でも、立地の良い場所に開きながら経営不振になった例は多い。問題は、何年もこの状態を継続できるようにするということだ。凡庸な経営者なら、初年度の成功に奢り、それからの戦略がおろそかになってしまうものだが、氏は、問題点を改善していき、このような立地条件の悪さにも関わらず、レストラン部門で毎年利益を出し続けているというのがすごい。

 ワイン造りは、規制の多い、なんともリスキーな商売のようだ。免許を取るためには、年間6000リットル以上製造できる設備と施設が必要なため、初期投資が大きくなる。また、ブドウが育つまでには時間がかかるため、別の収入減も必要なのだ。その収入源が、氏の場合はレストランというわけだ。もっとも、現在のところ、毎年、その収入を上回る位の設備投資を続けているとのことだが。もちろん、ワイナリーの方は、まだまだ赤字だということである。しかし、この本を読む限り、前途は十分に開けているように思える。

 玉村氏のワイナリービジネスが、これまでのところうまく回っているのは、氏のビジネスに対するコンセプトが非常に明確だということにあるのだろう。氏の考え方が表れていると思われる部分を何箇所か抜粋してみよう。

 「経済的な裏づけや資金の調達の方法を考えるよりもずっと早い段階から、自分がつくるならどんなワイナリーにしたいのか、それによってなにを達成したいのか、という、事業の目的とコンセプトは明確に形成されていました。」(p69)

「食べることが好きで、料理をするのが好きで、バカ話をして大笑いするのがもっと好きで、人が善意を抱くことができる瞬間を共有するのがいちばん好きな、私がやりたい仕事は明確でした。」(p80)

「ここでおこなわれている農業の仕事や、料理やパンやワインをつくる仕事のすべての過程を、隠すところなく見てもらう、というのが、ワイナリーをつくるときの基本的なコンセプトであり、設計の目的だったのです。」(pp87-88)

 客は、コンセプトが明快だからこそ、共感を感じて、こんな不便な場所にある店にわざわざ足を運ぶのだ。これが、何がコンセプト化分からないような店だったら、街中にいくらでもあるので、わざわざ、長野県の山中まで足を運ぶ必要はないだろう。

 氏は、ワイナリービジネスを通じてた「里山ビジネス」という考えに思い当った。里山の自然の恵みと共に、拡大しないで持続し、持続しながら生活を豊かにするというものだ。 経済学の常識では、経済は成長しないといけないらしい。だから、経済成長率と言ったものが非常に問題にされる。しかし、これはネズミ講といっしょで、有限な資源を考えれば、どこかで破たんするのは明らかだろう。この「里山ビジネス」というコンセプトは、問題山積みの日本経済に対する処方箋の一つとなるのではないだろうか。

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Last updated  June 22, 2010 07:24:47 AM
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