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カテゴリ:日々の読書(ビジネス)
最近よく、ブラック企業という言葉を聞く。労働法令など、どこへやら。社員に、むちゃくちゃな労働などを強要する企業のことである。SEもので有名なきたみりゅうじ氏が新卒で就職したIT企業などもブラック企業の範疇に十分に入っていると思われる。氏のその時代の体験を漫画で綴ったのが、「新卒はツライいよ!」(幻冬舎)である。 きたみ氏が大学を卒業したころは、不況の真っただ中。尿管結石に苦しみながら、必死の就職活動で何社かの内定を得ることができたのだが、結局彼が選んだのがいちばん小さなソフトウエアを開発する会社。勤務地が横浜であることや小さいがゆえに見通しがきくフランクな社風などが自分にぴったりだと思って入社したのだが、実はこれが大失敗だったようだ。 プログラミングもろくに教えてもらえないうちに、社長の気まぐれで、社長直属の社長室付にされたり、片道2時間半もかかる客先に、孫請け仕事ながら元請け社員を装って出向させられたり、いきなりプロジェクトリーダーにさせられたりと、大変な会社生活である。 こういった会社では、客先への派遣を早く切り上げたがるらしい。なぜなら、客先では、一人が1人役の仕事しかできないが、自社にもどれば、幾つもの仕事を掛け持ちさせることができ、一人を2人役も3人役にもこき使えるからである。開発要員を、本来必要な人数より減らして開発させるというのも日常茶飯事のようだ。 どうしても、自社の開発要員が不足するときは、外注と称して、他社から派遣してもらうようだが、これもまともに仕事をしない(できない?)トンデモない人間が来ることがあるようだ。キタミ氏は、素人同然ながら、プロジェクトリーダーとして、システム開発をまかされ(押しつけられ?)るのだが、これがまたすさまじい。本来4人体制で6ヶ月のプロジェクトを、外注2人と開発させられるのだが、この時点で1人要員が不足している。おまけに、派遣されてきた外注の一人がとんでもない人間(更に、彼の代りに派遣されてきた人間もとんでもない人間だった)だったため、結局は本来必要な人数の半分である2人で開発する羽目になってしまい、家にも帰れず、ろくに寝る暇もないような、まさに命がけの修羅場を経験する羽目になってしまったのである。 若いうちにある程度の修羅場を経験することは、実力を伸ばす一番の方法である。超多忙な中で、必死で仕事をすることにより、経験が本当に身につき、色々と工夫も生まれていくのだ。しかし、氏の就職した会社の場合は、限度を超えているようだ。確かに、氏の実力は、この修羅場を通じて、飛躍的に伸びたようだが、一歩間違えれば過労死である。おまけに、できるようになればなるほど、一層多くの仕事を押し付けられていく。 彼の就職した会社は、結局は夢を見られない会社だったのだ。夢を見られる会社なら、少々忙しくても働くことはそう苦にはならないだろう(限度はあるが)。しかし、働いているのが、ブラック企業だったら、働いても働いても夢は無残に砕けていく。結局、キタミ氏は、退職を決意し、彼の親しい先輩たちも会社を辞めていく。 これが、実写ドラマだったりしたら、かなりシリアスなものになってしまうだろうが、キタミ氏の味のある漫画で綴られているため、ペーソスとユーモア溢れるものになっている。でも、これから就職する人には、会社を選ぶ時は、なるべく多くの情報を入手して、熟考することを薦めたくなる一冊だ。 ○ランキング今何位? ○姉妹ブログ ・「文理両道」 ・「本の宇宙(そら)」 (本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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