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カテゴリ:日々の読書(ビジネス)
知的戦闘力を高めるためと副題付きの本書。私も何かを学ぶのなら基本的に独学しかないと思う。人から教えられたことはなかなか身につかないし、応用も効きにくいのである。自分で勉強して徹底的に考えたことこそ、真に自家薬籠中のものとなるのである。 本書で面白いと思ったのは、本書で紹介されている2つの本の読み方。すなわち、メタファー的読書とメトノミー的読書である。前者は初学者向けの本から初めて、横にどんどん読書領域を広げていくという幅の読書であり、後者は、次第に専門的なものを読んでいくという深さの読者である。 しかし私は第3の読み方があるのではないかと思う。特に何かを独学するにあたっては必要になるのではないか。それは一冊を徹底的に読み込むのである。何かを学び始めた際に、基礎になることをあたかも塗り物を何度も塗り重ねるように読み込んでいくのだ。これは、一種のフレームワークを身に着けるということであり、これによって基礎的な知識を身に着けたうえでないと著者の言うような読み方をしても効果は薄いだろうと思う。もちろん基礎となるものなので、あまり通俗的なものは避けた方がいいだろう。 最後に知的戦闘力を高めるためにリベラルアーツの各分野なるものが紹介されている。自然科学も一応掲載されてはいるものの、なんだか生物学関係に偏っているような気がしないでもない。まあ著者の経歴を見るともともと哲学系の人みたいだし、根っからの文系人が入るには生物学関係が敷居が低いのかもしれない。工学関係のものは一冊も入っていないし、そもそもジャンルさえ設定されていないというのはかなり気になるところだ。 そもそも文系人にとって、一番敷居が高いのは物理学なんだろうか。そのこともあって明らかな間違いが書かれている。なんでもファラデーがマクスウェル方程式を導いたとか。 <典型例が物理学で、たとえばファラデーは電磁気学の研究において流体力学からの類推を用いてマクスウェル方程式を導いていますし・・・>(p172) ファラデ-が偉大な科学者であり電磁気に関する各種法則を見出したことは間違いないが、彼は高等教育を受ける機会がなかったこともあり、数式の扱いといったことはあまり得意ではなかったようだ。これを定式化してマクスウェル方程式を導いたのはもちろんマクスウェルである。こういった記述を読むと、文系人が自然科学を軽視している実例を見るみたいでちょっとがっかりする。 初出は、「風竜胆の書評」です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
June 21, 2018 12:28:46 PM
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