カテゴリ:韓国
韓国軍はどこを向く 敵対的な朝鮮半島の出現か 2018-12-4 尾上定正・元空将 毎日新聞 日韓関係は「国と国との関係が成り立たない」と安倍晋三首相が批判するほど厳しい状況にある。
最終的かつ不可逆的な解決として日韓両国が合意した「和解・癒やし財団」の解散を韓国政府が一方的に発表したことを受けた見解であり、日本国民の大半が同じ気持ちであろう。
「2018大韓民国海軍国際観艦式」(10月10~14日)で自衛艦旗(旭日旗)掲揚を自粛するよう要請を受けた海上自衛隊が艦艇派遣を取りやめたことや、韓国大法院(最高裁)が10月30日、韓国人の元「徴用工」4人に対する新日鉄住金側の損害賠償を認める判決を下したことなどを含め、一連の一方的かつ理不尽な韓国側の行為が現状を招いたのであり、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の責任は極めて重い。
だが、その陰ではさらに由々しい事態が韓国軍で進行しており、日本国内の反韓感情の高まりと今後の日本政府の対応次第では、一気に敵対的な朝鮮半島が出現する恐れがある。
安っぽい軍事ショー
10月1日、韓国国軍の日を記念する式典に出席する機会を得た。折しも航空自衛隊幹部学校に2度留学経験のある鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)合同参謀議長(空軍大将)の国防部長官就任が承認された直後であり、国軍創設70周年記念式典は知日派の長官にとって最初の晴れ舞台のはずであった。
今年の式典は例年のような観閲式ではなく、朝鮮戦争の戦死者等を顕彰する戦争記念館の「平和の広場」で夜間に行われた。長官式辞、文大統領による表彰と訓示の後は、儀仗(ぎじょう)、ドリル、演武、将来戦模擬展示、そして歌手のPSY(サイ)のパフォーマンスと極めてショー的要素の強い式典が繰り広げられた。
観衆は喜び、TV中継もされたが、一体何のための式典であったのか?
文大統領の訓示は「国民とともに」「平和」「未来」といった言葉が繰り返され、南北サミットの成果と未来志向の平和実現という自身の政治指導とその成果を誇張するものであった。
本来、最高指揮官たる大統領が国軍を代表する精強な部隊を直接観閲し、指導することで部隊の士気を高めるべき式典が、大統領に政治利用された安っぽい軍事ショーに堕してしまったのである。
竹島での韓国軍演習は続く
民主国家の軍隊が政治指導に服するのは文民統制(Civilian Control)の原則として定着している。記念式典の翌日、烏山(オサン)空軍基地の韓国空軍作戦軍司令部を訪問したが、司令部の立派な応接室の壁には竹島上空を編隊飛行する戦闘機の写真が掲げられていた。
韓国の防衛駐在武官を経験した航空自衛隊の元航空総隊司令官によると、いずれの司令部にも同様の写真があり、率直かつ誠実に批判すると、韓国側の司令官は、政府からの指示なので理解してほしいと判で押した回答しかしないとのこと。
北朝鮮を刺激しないため、米韓合同演習を延期する一方、竹島防衛演習は日本から繰り返し中止を要請するにもかかわらず、毎年2度行われ、今年も6月、艦船6隻と航空機7機を派遣し海兵隊の一団が上陸する訓練を2日間にわたって実施している。
英フィナンシャル・タイムズ紙が、「これまで日本と韓国を火の海にすると脅してきた北朝鮮に対する軍事訓練を韓国がやめ、このタイミングで日本の脅威に目を向けることは、二重に困惑させられる」と書く通りであろう。
進む対北朝鮮宥和政策
韓国軍の直面する脅威が北朝鮮であることは明白だ。朝鮮半島西側海域の防衛警備を担当する第2艦隊司令部のある平沢(ピョンテク)基地には、北方限界線(NLL)周辺で起きた海戦で被弾した巡視艇や戦死した兵士等に関する展示がある。 さらには、北朝鮮潜水艇によって撃沈された「天安」が引き揚げられ、すさまじい爆圧で破断された巨大な船体をさらしている。 いずれも、現在も続いているNLLを含む海上での緊張の証左であり、日々警戒監視に当たる韓国海軍将兵の緊張感と士気の高さには敬意と称賛を贈りたい。
その一方で、韓国軍の最高指揮官であり、政治統制の最高責任者である文大統領は、本年初頭から北朝鮮宥和(ゆうわ)政策を一気に進め、9月の南北首脳会談の際には「軍事分野合意書」に署名した。11月からは合意書に基づく朝鮮半島の軍事境界線付近での緊張緩和措置が本格化し、非武装地帯の監視所の撤去や飛行禁止区域の設定など韓国側の一方的な「武装解除」が進んでいる。
歴史的な米朝首脳会談から間もなく半年がたつが、北朝鮮の非核化は何も進まず(間違いなく北朝鮮はこの期間を核兵器開発に利用しているのでむしろ悪化)、2回目の米朝サミットの展望も今後の非核化の道程も不透明である。
在韓米軍の大幅削減も
このまま、文大統領による見せかけの宥和が続くとは思えないが、なし崩し的に終戦宣言が出されると在韓米軍の存在理由が無くなり、トランプ米大統領が在韓米軍の撤退もしくは大幅削減を決断する可能性も否定できない。
そうなったとき、戦時統制権も米韓合同司令部も無くなり、新たな存在意義を必要とする韓国軍が残されることになる。その用意が軍にできているようには思えないが、韓国軍はどこへ向かうのだろうか?
軍事分野合意について韓国のネットユーザーからは、「ついに朝鮮半島に平和がやって来た!」「すごい合意だ。履行されれば平和統一の第一歩になる」「これからは北朝鮮から国を守るのではなく、他の外国勢力から国を守るために国防力を強化しなければならない」と喜ぶ声が寄せられたという。
日本の改憲に反対する韓国軍元大将
10月16日、韓国軍元合同参謀議長の元陸軍大将と懇談する機会があった。カクテルパーティーの席上ではあったが、日本国憲法改正の話になり、私が改正に賛成すると言うと、「もちろん日本が決めることだが、私は反対だ」と明言された。 理由を聞くと「まだ早すぎる」と即答。戦後70年を経てなお国家として日本を信頼していないということに他ならないだろう。
米国を介してではあるが北朝鮮の脅威に共同して対処すべき韓国軍のトップを務めた人物の本心に、改めて日韓関係の難しさと深い失望を感じた。
文大統領の北朝鮮政策には、先月、外交官OBの有志団体と韓国軍の退役将官で構成される「星友会」がそれぞれ緊急非難声明を出したが、文大統領の支持率は低下してもなお59.3%を維持している(10月25日時点、リアルメーター提供)。
世論に支えられた政治指導と元合参議長の本音、その一方で親日派の国防部長官の存在を思う時、少なくとも日本として韓国軍が向かう方向をしっかりと見定めておく必要がある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019.01.07 00:00:28
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