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2019.08.15
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カテゴリ:反天皇制
(インタビュー)大元帥たる昭和天皇 歴史学者・吉田裕さん   201987日    朝日新聞

 アジア・太平洋戦争の戦場の実態を克明に描き、20万部のベストセラーになった「日本軍兵士」。その著者で、近現代の天皇制研究でも知られる吉田裕さんは「天皇の軍隊」の実像を読み解く数少ない研究者だ

 

大元帥たる昭和天皇は、あの戦争とどう関わり、どこまで兵士の窮状を知っていたのか。沖縄戦や特攻をどう考えていたのか。

 

 ――「日本軍兵士」には、食糧不足や劣悪な装備など、日本軍の過酷な実態が書かれています。

 

 「軍隊の問題を自身に置き換えて考えられるように、『心と身体』に重きを置きました。体重の半分の装具を背負い、飢えや病気、心の病に苦しむ兵隊の姿から、戦争の現実を知ってほしかった」

 

 ――そうした戦場の現実を昭和天皇は知っていたのでしょうか。

 

 「かなり把握していたと思います。1943年9月には侍従武官長に、将兵を飢餓に陥らせるのは耐えがたい、『補給につき遺憾なからしむる如(ごと)く命ずべし』と言っています。ただ、最後まで日本軍の戦力を過信していたので、実情よりは楽観的だったとはいえるかもしれません」

 

 ――実際の戦況をどの程度把握していたのですか。

 

 「どこでどの軍艦が沈んだかなど、日本軍が受けた被害については、ほぼ確実に把握していました。ただ、石油の備蓄量などは数字を改ざんして上奏されていたとも言われ、100%正確に知っていたかは疑問も残ります」

 

 「一方で、敵に与えた損害は、誇大に報告されがちでした。台湾沖航空戦などが典型ですが、パイロットからの報告を精査せずに積み上げていったので、11隻もの航空母艦を沈めたことになっていました。

実態とかけ離れた戦果が天皇のもとに情報として集められ、敵も苦しいはずだという楽観が生まれてしまいました」

 

 ――「まだ戦える」と思ってしまったわけですか。

 

 「45年2月に元首相の近衛文麿が戦争の終結を上奏したときに、天皇は『もう一度戦果を挙げてからでないとむずかしい』と答えています。その時点でも、まだ戦果を挙げられると信じていたんですね。米軍に打撃を与えて、できるだけ有利な条件で講和に持ち込むという『一撃講和論』をずっと支持していました。そのために戦争終結がずるずると遅れてしまった面はあると思います」

 

 「沖縄戦でも、当初は、特攻作戦がうまくいっていると誤認していたようです。天皇が戦争をあきらめるのは45年5月ごろです。ドイツの降伏と、沖縄がもう持ちこたえられないとわかって、ようやく終戦を決意したのです」

 

 ――沖縄戦に、どの程度具体的に関わっていたのでしょうか。

 

 「沖縄戦では、陸軍と海軍では当初の作戦方針に違いがありました。海軍は沖縄で最後の決戦をしようとしたのですが、陸軍は本土決戦を主張し、沖縄はその『捨て石』と見なしていました。持久戦にして米軍に損失を強い、本土決戦に備えようとしたのです」

 

 「天皇は海軍を支持しました。陸軍は持久戦に備え陣地に立てこもる戦略をとろうとしましたが、天皇は出撃して決戦するように促しました。沖縄戦の場合は、天皇は海軍の側に立って、作戦に介入していたといえます」

 

 ――天皇が作戦方針の決定にも関わっていたわけですか。

 

 「歴史学者の山田朗さんが、どの作戦の際に天皇がどんな発言をして、どう影響を及ぼしたかを詳しく研究していますが、かなり主体的に関わっています。天皇が発する最高の統帥命令を、陸軍は『大陸命』、海軍は『大海令』といいますが、戦後の占領期、大陸命や大海令の存在は占領軍に秘匿されました。隠さなければいけなかったという事実が、天皇が作戦に関与していたことを証明しています」

 

 ――戦争末期の特攻作戦についてはどうだったのでしょうか。

 

 「陸軍の場合、正式な特攻部隊はつくられませんでした。部隊編成は天皇の大権ですが、特攻のような『非常の戦法』を天皇が裁可すると『徳が汚れる』という判断が陸軍にはあったんです。だから既存の部隊に、必要な機材と人員を増加配備して出撃させました」

 

 「一方、海軍の場合は特攻専門部隊が編成されました。『回天』や『桜花』の部隊がそうです。編成を裁可している以上、特攻が天皇の意思に背いて行われたとは言えません。45年1月には本土決戦用の陸海軍共同の作戦計画を裁可していますが、その中に特攻が含まれています。作戦としても特攻を認めているわけです」

 

 ――参謀本部や軍令部の幕僚たちは、天皇の意思に全面的に従っていたのでしょうか。

 

 「基本的には、参謀本部や軍令部がつくった作戦計画の大綱を天皇が見て、承認するという形でしたが、作戦に問題があると天皇が考えた場合には、意思を表示しています。天皇の積極的な意思表示があった場合には、幕僚たちも作戦を変えざるをえませんでした」

 

 「ガダルカナル島の戦闘が激化していた時期に、陸軍の航空部隊を増援に出すよう海軍が強く要望しました。陸軍の飛行機は洋上飛行には不向きなので、陸軍側は抵抗します。しかし天皇は、繰り返し航空部隊を出すように言い、陸軍も結局は従っています」

 

 ――明治天皇や大正天皇と比較すると、昭和天皇は特に統帥に関与していたとは言えるのですか。

 

 「大正天皇は若いときから病気がちで、大きな戦争もなかったので、統帥権の発動者として行動することはほとんどありませんでした。明治天皇は、様々なかたちで戦争や作戦に関わりましたが、伊藤博文を始め、幕末の動乱をくぐり抜けてきた元勲たちが天皇を支えていました。彼らは作戦に介入して、戦争指導をするだけの力を持っていたんです。昭和期になると、伊藤のような人はいなくなった。天皇が文字通り軍を統帥することになり、制度の欠陥が露呈してしまいました」

 

 ――天皇と軍隊をめぐる制度の欠陥とは何だったのでしょう。

 

 「明治憲法体制では、あらゆる国家機関が天皇に直属していました。国務大臣も個別に天皇を補佐するシステムで、総理大臣も他の大臣と横並びの存在でしかありませんでした。

内閣の外側に統帥部があり、それと並列して軍司令官や連合艦隊司令長官がいる状態です。

普通の国なら参謀総長の下に軍司令官が置かれるのですが、明治憲法体制での参謀総長や軍令部総長は、基本的には天皇の命令を伝えるだけの存在で、自分では命令できません」

 

 「昭和天皇は、国務については輔弼(ほひつ)の大臣を重んじるが、統帥については自分が最高責任者だと考えていたという証言があります。すべてを天皇に上げて、裁可を得なくてはならず、戦況の急な変化に対応できない。総力戦の時代には通用しないシステムでした」

 

 ――天皇の役割も含めて、旧日本軍がどんな組織で、どう動いていたのかは、あまり知られてこなかったように思います。

 

 「日本の近現代史研究では、長い間、軍事史が空白でした。戦後の近現代歴史学を最初に担った世代は、ほとんどが軍隊経験があり、戦争や軍隊にはもう関わりたくないという気持ちがあったと思います」

 

 「日本の伝統的な歴史学の考え方では、50年経ていないものは研究対象にならないとされていました。当事者がまだ生きているから利害関係があり、客観的に見ることができないからという理由です。もうひとつ大きいのは、情報公開が遅れていたことです。僕が卒業論文を書いたのは77年ですが、当時、旧防衛庁の防衛研修所戦史室には、所蔵資料の目録さえなかった。存在そのものが伏せられていた資料も多かったんです」

 

 ――遅れた間に、当事者はどんどん死んでいきますから、研究自体も難しくなりますね。

 

 「あの戦争について、外交史、政治史、経済史などの研究はかなり進みましたが、最後の空白地帯が戦史です。軍隊や戦場そのものを歴史分析の対象にする。それが『日本軍兵士』で一番書きたかったことなんです。天皇と戦争のかかわりもその一部です」

 

 ――「日本軍兵士」があれだけ読まれたのはなぜでしょう。

 

 「読者の感想を見ると、ブラック企業など、いまの問題に引きつけて読んでいる人も多いようです。バブル時代のCMで『24時間戦えますか』というのがありましたけれど、疲労の激しいパイロットに覚醒剤を打って出撃させる発想と、基本的には変わってないですよね」

 

 ――戦史の空白を埋めていく上で、重要なことは何でしょうか。

 

 「非売品や私家版で出された部隊史、兵士の回想録や日記の復刻などの資料の散逸が一番心配ですね。私家版だと納本義務がないので、国会図書館にないものも多い。活字になっていない日記やメモなども多く残されているはずなのですが、本人が亡くなると処分されてしまいます。戦争体験の記録を国が収集して、保存する仕組みをつくるべきだと思います」

(聞き手 シニアエディター・尾沢智史)

 

     *

 

よしだゆたか 1954年生まれ。専門は日本近現代史。一橋大学特任教授。著書に「昭和天皇の終戦史」など。6月から東京大空襲・戦災資料センター館長。

 






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最終更新日  2021.09.10 01:37:46
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