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♪ 空間から地上へ移る虫たちのあわいの時の短かくもある
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8月も残りあと5日。かなり涼しくなってあの酷暑が懐かしいくらい。未明にはタオルケットが欠かせない。何だかんだいっても日本の四季はまだまだ健在だ。内容は多少変わっていくにしても緯度・経度、地理的環境は変わらないわけだからその特徴は持続されていくわけだ。
あのクソ喧しかった蝉も静かになった。日本に生息しているセミは36種1亜種もいるというから驚く。地域性があって全国にいるという訳じゃないのだろう。わが家の周辺で確認できるのはせいぜい4種類(クマゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシ、ミンミンゼミ)くらいだ。
「セミの寿命は一週間」というのはどうやら間違いのようで、捕まえたセミを長く飼うことが難しいのでそういう風に言われてきたらしい。
夏の間にセミの死骸をあまり見ないのを疑問に思って、実際に調べた高校生が岡山にいる。
家の近くでアブラゼミ、クマゼミ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミなど計863匹を捕まえ、マーキング調査。そのうち15匹をまた捕まえ、さらに4匹は3度も捕まえた。
セミの生存期間を調べた植松蒼さん(18歳)。
後ろは調査結果のまとめ、持っているのは小学校時代の自由研究。
一人で約2カ月もかけて調べた結果、アブラゼミ32日、ツクツクボウシ26日、クマゼミ15日。捕まえた前と後も生きていることを考えると、もっと長いか。
アブラゼミはけっこう長生きだが、あの喧しいクマゼミが意外にも短命で驚く。そういえば目に付いた亡骸はクマゼミばかりだった。短命の分、命を激しく燃やして鳴くのだろうか。
植松くんは、広島大学で開かれた「中四国地区生物系三学会合同大会」で発表。地道な研究が専門家たちに評価され、高校生の部(動物分野)で最優秀賞に選ばれたそうだ。
小学1年の夏から毎年、自由研究でセミを調べている彼は、中学3年の夏休みに「一般的にセミの成虫は10日前後の命といわれるけれど、もっと長いのでは」との仮説を立てて調査したらしい。
生態に詳しい広島大学大学准教授の税所康正さん(64)によると、鳥やカマキリなどに襲われなければ3週間程度は生き、1カ月以上も珍しくない、と現在では考えられているそうだ。
セミの幼虫の「地中生活7年」とか言われているが種類や環境によっても変わるらしい。植木鉢で幼虫を飼育して調べたものでは、クマゼミ、アブラゼミ、ミンミンゼミは2~5年、ニイニイゼミは3~4年、ツクツクボウシは1~2年だそうだ。自然界では様々な条件によってかなり左右されるのでバラツキはかなり大きいらしい。
虫の声が時や季節の移ろいをしみじみと感じさせてくれる。盛夏のアブラゼミやクマゼミ、夕暮れ近くに鳴くヒグラシ。夏の終わりに遅れて鳴き始めるツクツクボウシ。それにオーバーラップしながらウマオイやコオロギが鳴き始める。
3次元空間に響き渡っていた鳴き声が、2次元の地上へと移っていく。暗転の舞台のように、気が付けば虫の声が主役となって足元へと移り、夜の脚が長くなっていく。
もしセミとコオロギが逆の季節に鳴いていたらどうだろう? そんな事は考えられない程にピッタリと合致して鳴く虫たち。完璧に整えられている四季の移ろいに、自然界の神秘を思わずにはいられない。
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