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カテゴリ:クラシック音楽
フランスのソプラノ、ジュリー・フックス(1984-)の「Amadè」と題されたモーツァルト集を聴く。 ソニーへの移籍第一弾だ。 ジャケ写がちょっと煽情的な感じがして、あまりいい印象がなかった。 最初はそれほどとは思わなかったのだが、spotifyで何回か聴いているうちにそのうまさにほとほと感心し、ハイレゾを購入してしまった。 リリカルなソプラノだろうが、暖かく厚みのある声で、高音域でもあまり細くならならない。 むしろ高音域になるほど彼女のビロードのような滑らかな声の素晴らしさが実感できる。 なので、通常リリック・ソプラノで感じられる弱弱しさは全く感じられない。 フレージングは清潔で、情感を大切にした歌唱が素晴らしい。 「ツァイーデ』からのアリア「虎よ、その爪を研ぐがよい」のような激しい表現も堂に入ったもので、表現の幅が広い歌手なのだろう。 気に入ったのは最後の『別れの歌』 この歌は確かバーバラ・ボニー(Teldec)の演奏で親しんでいた記憶がある。 NASに入っていたので、聞いてみたが、フックスの歌とまるで違う。 声が細くチャーミングな歌唱だが、「別れの歌」という感じはなく、悲しみの度合いはフックスのほうが強い。 ボニーはカットがあり、フックスより1分半短い。 wikiによると、ヘ短調という調性はモーツァルトでは比較的少なく、フィガロの結婚のバルバリーナのアリアを思わせるとある。 なるほど一曲目がバルバリーナのアリアで、「別れの歌」と同じムードが感じられる。 「フィガロの結婚」からは三曲選ばれているが、全部違う役の歌だ。 ことさら役の違いを際立たせているわけではないが、どの役も納得の出来。 バックはヘンゲルブロック指揮のバルタザール=ノイマン・アンサンブル。 古楽としてはきついサウンドが聴かれることはあまりなく、出るべきところは出ていて絶妙なサポートだ。 むしろ、フォルテ・ピアノや管の鄙びたサウンドがモーツァルトにふさわしい。 オーケストラ単独の曲も3曲あり、悪くない。 特に『エジプトの王ターモス』K.345の第4幕後の幕間音楽はデュナーミクの幅の広い、厳しい音楽で、なかなかの迫力だ。 同じムードの「ツァイーデ」のアリアにアタッカで繋がっているのも上手いやり方だ。 別れの歌 歌詞 Julie Fuchs:Amadè(Sony 19658758952)24bit 96kHz Flac ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト: 1. 歌劇『フィガロの結婚』K.492 ~カヴァティーナ「なくしてしまって…あたし困ったわ」[バルバリーナ] 2. バレエ音楽『レ・プティ・リアン』K.299b ~第3曲(Andantino)[オーケストラ] 3. 歌劇『魔笛』K.620~アリア「ああ、私にはわかる、幸福が永遠に去ってしまったことが」[パミーナ] 4. 劇音楽『エジプトの王ターモス』K.345 ~第4幕後の幕間音楽 (Allegro vivace assai)[オーケストラ] 5. 歌劇『ツァイーデ』 K.344 ~ アリア「虎よ、その爪を研ぐがよい」[ツァイーデ] 6. 歌劇『後宮からの逃走』K.384 ~アリア「何という喜びと楽しみが」[ブロンデ] 7. コントルダンス『意地悪な娘たち』K.610[オーケストラ] 8-9. 歌劇『フィガロの結婚』K.492~レチタティーヴォとアリア「ついにその時が来たわ…さあおいで、遅くならず、素敵な喜びよ」[スザンナ] 10. 『オフェーリアの健康回復に寄せて』K.477a(K.Anh.11a)~第3曲「あの無垢な子羊を」 11-12. レチタティーヴォとロンド『どうしてあなたを忘れられようか~恐れないで、愛する人よ』K.505 13. カンタータ『悔悟するダヴィデ』K.469 ~第8曲:アリア「暗い、不吉な闇の中から」 14. カノン『わが太陽は隠れたり』K.557 15-16. 歌劇『フィガロの結婚』K.492~レチタティーヴォとアリア「スザンナはまだ来ないわ…今はどこなのでしょう、あの美しい時は」[伯爵夫人] 17. 歌曲『別れの歌』K.519 ジュリー・フックス(ソプラノ) バルタザール=ノイマン・アンサンブル[ピリオド楽器使用] トーマス・ヘンゲルブロック(指揮) 録音2022年1月、パリ、フォンテーヌブロー宮殿 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023年03月28日 16時25分57秒
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