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南風のC級シネマ評論

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2006/05/20
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カテゴリ:映画-欧州
 さてさて、「SWING GIRLS」で元気になってもらったところで、元のシリアス路線に戻りましょうか・・・って、冗談なんですが、今日の「ダンサー・イン・ザ・ダーク」、実は「蝶の舌」を見た後の4月に、再び見たものです。

 「蝶の舌」を見て、その作品を紹介してくれた宮崎のあやちゃんに、「”蝶の舌”って、見る人の年齢や環境を選ぶよね。独身、子育て中、子育てが終わったかどうかで評価が違ってくると思う」と話したら、「”ダンサー・イン・ザ・ダーク”と一緒ですね」って、宮崎のあやちゃん、即座に答えたのでした。

 ストーリー  goo映画より
1960年代、アメリカの片田舎。チェコからやってきたセルマ(ビョーク)は、女手一つで息子ジーン(ヴラディカ・コスティク)を育てながら工場で働いている。セルマは遺伝性の病気のため視力を失いつつあり、ジーンも手術を受けないと同じ運命をたどるのだが、それを秘密にしつつ、手術費用をこつこつ貯めていた。彼女の生きがいはミュージカル。アマチュア劇団で稽古をしたり、仕事帰りに友人のキャシー(カトリーヌ・ドヌーヴ)とハリウッドのミュージカル映画を観ることを唯一の楽しみとしていた。しかしセルマの視力は日増しに弱くなり、ついには仕事のミスが重なり工場をクビに。しかもジーンの手術代として貯めていた金を、親切にしてくれていたはずの警察官ビル(デイヴィッド・モース)に盗まれてしまう。
                もっと知りたい人は、ここをクリック・・・


 やっぱり何回見ても、切なくなる映画だ。

 セルマが置かれている現実が、手持ちカメラでの撮影によって表現される。
職場での様子、獄中での様子などのセルマの実生活の部分は、ニュースなどの現場中継みたいなドキュメンタリータッチで、揺れている映像は時として見ている我々を不安に陥れる。

 一方、セルマが少しでも現実のつらさを紛らわそうと空想するシーン(=ミュージカルの部分)は、きちっとカメラを固定していて、その画面からも見ているわれわれに安心感を覚えさせる表現だ。
 セルマが空想して歌うシーン、それはまさしく、セルマの希望に他ならない。

 現実と空想・希望・・・この二つ風景をそれぞれの方法で表現し、物語は核心へと深まっていく。
 (この現実と空想の世界を見事に表現するセルマ=ビョークの演技がいい。)

 子供に自分の病気が遺伝すると解っていても、それでも子供が欲しいと産んだセルマ。これを「自分勝手」だと取るか、それとも「母性」だと取るか難しいところだが、このことによって、セルマはこどもに対して罪を背負う事になる。

 無実の罪(註)で犯人にされるセルマ。お金を溜めていた訳、お金の使い道を話せば、ひょっとしたら無罪になったかも知れないのに、子供のためにそれを話さない。
 私選弁護人を雇う時、その代金が子供の手術費だと知って即座に弁護人を断る。それはすなわち、自分の死を意味するのだ。

 ここまでくると、セルマは単なる子供への贖罪のために生きているのではないことが解る。
 刑務所での友との会話。
 「なぜ産んだ」と、友が言う。
 セルマはこう答える。「赤ちゃんを自分の手で抱きたかった・・・」


 ラストシーン。
 セルマはうながされて、絞首台へと向う。
 でも、なかなか歩けない。
 歩くヒントは、今まで自分自身がやってきたリズムをつかむこと。
 空想の世界の力を借りて、ようやく歩くことができる。
 だが、絞首台の上で魔法は解ける。
 現実の恐怖が襲う。
 
 そしてその上で歌うは、最後から2番目の曲である。
 けっして終わりではない、最後から2番目の曲である。
 
 カメラは手持ち。
 今までセルマが歌うミュージカルのシーンとは違う。
 手持ちカメラでのシーンだ。
 
 子どものために命を捧げた時、始めてセルマの現実と空想(=希望)が同化するのである。
 それはけっして子どもへの贖罪のためにやったのではない。
 これから子どもと共に生きるために、最後から2番目の曲を歌いながら自分の命の仕舞いをしたのだ。

 何とも、切ない、切ない映画である。
 そしてこの映画、やっぱり子どもを育てたことのある人の方が、より胸に突き刺さると思います。

(註) 2006.5.22加筆
本文で「無実の罪」と書きましたが、無実の罪じゃないですね、訂正致します。後でかなりなことをやっています。その前の流れからみると、「情状酌量の余地がある」状態です。






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最終更新日  2006/05/22 08:28:11 AM
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