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天星音1005@ Re:ドジった!(12/30) こんばんは~ ドジってもなんとか手を打…
どどんぱ41@ Re:ドジった!(12/30) 今年の大晦日は荒れそうですね・・・ 暮…
ひなたぼっこねこ@ Re[2]:しんしん(12/28 灰色ウサギ0646さん こんばんわ。 >私も…

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2013.06.04
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カテゴリ:夢とや
ー で、朝までいたんですかえ。
髪飾りで艶やかに装った女が聞く。

ー ばかをいえ。
男は、女がついだ酒を飲み干して言う。
ー あれはこどもだ。勃つか。

ー おやかわいそう、その妓、女将に絞られたろうネエ。
ー 知るか。
ー おや冷たい。
ー 当たり前だ。

男は酒を干す。女が注ぐ。男はその女の手を掴む。
ー 人を斬って、何も感じない俺は冷たくないってのか。

ー ああ痛い、離しておくんなさいよお、
ー やっとうの相手じゃアないんですからね。

ー ふん。
ー なんだお前だって。

男は女の襟元を力任せに拡げる。
ー 綺麗なべべの下は、ただの女だ。

女は諸肌脱ぎにされたまま、毅然として男をみる。
ー ただかどうかは、ご存知でござんしょう。

ー ふん。
男は女を突き放す。
女は乱れた着物をなおす。

ー 俺には見える、
彼奴がどうでる、何処に潜んで誰と繋ぐか、
此奴がああする、其処へ行って何を説くか、
ただそれを他の奴に教えねばならん、
そいつらに判るように、筋道たてて、
解いて細かくなぜどうなのか、
ああ時間が惜しい、どうして皆俺の言う通りにしない、
最後なんて見えてるじゃないか、
こうこうこうすれば、こうなるだろうに。
どうして皆俺の言う事がわからねえんだ。

女は傍にあった丸い琴を手にする。
しゃら…しゃらん…。
女の白い細い指が、
長く伸びた竿にたゆとう。

ー ふん。
男は女を見る。
ー お前だってそうだろう。
ー え、身請けはいつだ。

ー おや、ご存知でしたかえ。

ー ふん。こういうことは知れるもんだ。
ー 良かったじゃねえか。

ー へえ。
女は楽器を爪弾きつづける。
冷たく整った顔は、笑うでなく、哀しむでなく。
馴染みになっても、大して言葉を交わすでなく。

激情のあふれるようなことはなく、ただ淡々と。

ー 最初からお前は俺をみてなかったな。
ー 上客はもっともてなすもんだぜ。

ー おや。もてなされすぎてうんざりだ、と
ー お顔に描いてありましたえ。

ー ふん。
ー 最初の無礼講でこの店の妓楼みんな揚げたなかで、
ー 俺にすり寄ってきやがらなかったのは
ー お前だけだからな。

丸い琴の音だけが、座敷に響く。
唄をつけない弦の音は、か細く、頼りない。


これが、別れか。

いいえ。また逢えましょう。

今度は、地獄で。






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Last updated  2014.05.10 02:29:22
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