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非常に適当な本と映画のページ

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2015.06.03
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カテゴリ:邦書

 神経科医伊良部一郎の活躍(?)を描く短編集。
 5作から成る。


粗筋

 伊良部総合病院の地下に、神経科があり、そこには肥満で薄汚い神経科医伊良部一郎と、スタイル抜群だが無愛想な看護婦のマユミがいる。
 ここを訪れる患者は、通常では有り得ない精神疾患を抱えているが、いずれも伊良部一郎の、医師らしからぬ言動に翻弄される。

【イン・ザ・プール】
 大森は体調不良で、下痢ばかりしていた。総合病院を訪ねると、そこの神経科を訪れるよう、指示される。
 神経科医伊良部一郎は、下痢は精神的なもので、根本的な治療法は無い、と言い張る。ストレスが原因と思われるから、運動でもしたらどうだと提案。
 大森は、若い頃やっていた水泳をやってみる事に。すると、体調は少しずつだが改善。それをきっかけに、毎日水泳するようになり、一日でも水泳しないと体調を崩す程の「依存症」になってしまう。
 公共プールでは、一定時間水泳すると強制的に休憩を取らされる。それに不満を持っていた大森に、伊良部が提案。夜間、公共プールに忍び込めば、監視員がいないので好きなだけ泳げる、と。
 公共施設に不法侵入する訳にはいかない、と躊躇する大森に対し、伊良部は無理矢理公共プールのある建物に連れて行く。二人で忍び込もうとするが、失敗。不法侵入未遂で逮捕されるのでは、と大森は恐れながら、伊良部と共にその場から逃げ出す。

【勃ちっ放し】
 田口は、局部が常に勃っているという、奇妙な症状に悩まされていた。
 精神的な病という事で、神経科を訪れた。
 神経科医伊良部一郎は、ショック療法を試みたりするが、全く効果は無い。
 そこで、大学病院を紹介する。
 大学病院で、田口は医師に問題の部分を見せる羽目に。が、そこでも治療は出来ないという。症例の記録として残す為に、田口を呼んだのだった。
 これを聞いた田口は、怒り狂って大学の設備を破壊。警察に逮捕され、2日間拘留される。
 その間に問題の症状は収まってしまった。

【コンパニオン】
 広美は、芸能事務所に所属するタレント。といっても、売れてはおらず、コンパニオンが主な仕事だった。
 彼女は、最近ストーカーに狙われている、と恐れるようになっていた。が、どこの誰にストーカーされているのかは分からず、不眠症に悩まされるように。
 ストーカーらしき人物の存在が確認出来ない以上、単なる被害妄想ではないか、と疑う友人の勧めで、神経科を訪れる。
 神経科医伊良部一郎は、彼女に対し、ストーカーを幻滅させる行動を取ったら、と提案。
 広美は一応そうした行動を取ってみるものの、被害妄想は拡大していき、周りにいる者全てが自分を狙っているのでは、と疑うようになる。
 それと同時に、自分はタレントとしての素質があるのに妨害を受けているから成功していない、という妄想にも陥る。
 映画会社のオーディションを受けるが、同時にアクションスターのオーディションを受けた伊良部と共に「悪ふざけ」扱いされ、会場から放り出される。
 それをきっかけに広美は芸能事務所を首になり、タレントではなくなる。すると、憑き物が落ちたように妄想癖が無くなった。

【フレンズ】
 雄太は高校生。携帯電話を一時でも手放すと手が震える、という携帯依存症だった。
 心配した母親が、彼を神経科に送り込む。
 神経科医伊良部一郎は、雄太の症状は「命に別状は無い」と判断。逆に、携帯電話についてあれこれ雄太に問い、携帯電話を購入。取るに取らない内容のメールを、雄太に送信する様になり、雄太をウンザリさせる。
 雄太は、携帯電話を通じて様々な人間と交流関係を深めているつもりだったが、いざとなると友人は一人もおらず、一人ぼっちになっていた。
 クリスマスの夜、一人でいた雄太はあれ程面倒に思っていた伊良部からの誘いを受ける。

【いてもたっても】
 義雄は、雑誌のライター。外出の際も何度も家に戻っては煙草の吸殻をきちんと始末したか確認するという、強迫神経症に苛まれる様に。神経科を訪れる。
 神経科医伊良部一郎は、煙草の不始末を心配するより、ガス漏れを心配したらどうだ、漏電を心配したらどうだ、と色々入れ知恵する。お陰で、義雄は煙草の不始末は勿論、ガスの元栓や漏電まで心配するようになってしまう。
 そんな所、自身が手掛けた記事で取り上げたホームレスが、女子大生に痴漢行為を働いた事を知る。責任を感じた義雄は、姿をくらましたホームレスを探し当てる。すると、ホームレスは実は麻薬の売人であった事が判明。義雄は、ライターとして花開く。
 義雄の強迫神経症は改善しなかったが、ライターとして飛躍するきっかけは掴む。


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解説

 藤子不二雄Ⓐブラックユーモア漫画「笑ゥせぇるすまん」の精神科医バージョンと言えなくもない。
 笑ゥせぇるすまんでは、ある者が喪黒福造と関わりを持った事がきっかけで奇妙な体験を経験し、最終的には身を破滅させる、というのが基本パターン。
 本作も、様々な精神的な病を抱えた者が神経科医伊良部一郎と関わりを持った事がきっかけで奇妙な体験をし、人生の転換期を迎える、というパターンになっている。
 喪黒福造は人間ではなく、超常的な存在だが、本作の伊良部一郎は、あくまでも言動が常識から外れた男に過ぎない。
「笑ゥせぇるすまん」では、喪黒福造と関わりを持った登場人物は超常的な力により奈落の底に突き落とされる(場合によっては命を落とす)。本作では、伊良部と関わりを持った登場人物は、伊良部の常識外れの言動(中には犯罪ではないかと思われる行為も)に振り回されるものの、あくまでも人生の転換期を迎えるだけ。見方によってはハッピーエンドになっている場合も。元の精神疾患は結局改善していない事も多いが。

 伊良部の言動は一般常識からは外れてはいるものの、重大な罪を犯すまでには至らない(もっと奇怪な言動を見せる人物は、現実世界でもフィクションの世界でもいくらでもいる)。
 最初の1篇では精神科医らしからぬ奇妙な言動に驚かされるが、それ以降は慣れてしまう。また、精神疾患を抱える登場人物の運命も、何となく想像出来る様になってしまう。
 その結果、どんでん返しは無く、捻りも無く、オチすら無い短編になってしまっている。
 ユーモアに満ちた、比較的読み易い文章で、ガンガン読み進められるが、1篇1篇を読み終わっても深い感動や驚きは無く、「そうでしたか」といった感想しか思い浮かべられない。

 伊良部は極悪人ではないが、善人でも無い。
 小説の登場人物が善人でないと魅力的に見えない、という訳ではない。寧ろ悪人だからこそ面白いと感じる場合がある。が、善人であろうと、悪人であろうと、何か光るものがないと興味を保てない。
 このキャラクターにいたっては、光っている部分が無く、通いざるを得ない作中の患者らと同様、読む側も勝手な言動にウンザリしていき、1篇読み終えるごとに興味を失う。

 伊良部の元を訪れる患者は、精神的に病んでいる部分はあるが、それ以外は普通の人間。
 捻くれた性格の持ち主ばかりで、読んでいる側としては共感し辛く、読み進むのと同時に関心が薄れていく。
 伊良部の言動に振り回されても、同情出来ない。一方で、逆に「いい様だ」とほくそ笑む事も無くなってしまう。
 伊良部が登場人物らに対し用意していた(と思われる)最終展開を迎えても、「ふうん。そうでしたか」といった感情しか浮かばない。

 伊良部という存在に対しても、患者らが抱える悩みに対しても、読み終える頃には興味を失っているので、読後感が物凄く悪くはない一方で、何故時間を割いて読んだのか、という理由も見出せない。
 ここまで特徴的なキャラやストーリー設定なのに、強烈な印象は無く、何の感想も思い浮かべられない事が、本作の最大の特徴と言える。
 社会や医学に対する新たな知識を得られた、著者の博学振りには舌を巻いた、という実感くらい湧けばそれだけでも「読んだ甲斐があった」と思えるのだが、それすらも無い。
「昔読んだ覚えがあるけど、どんな内容だったのかは覚えていないし、特に興味も無い」といった本になりそう。







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Last updated  2015.06.04 00:09:00
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