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カテゴリ:洋画
シルヴェスター・スタローンをアクション俳優に押し上げたランボーシリーズ第5弾。 第1弾が「ファースト・ブラッド」だったのに対し、本作は最終章である事を暗示する「ラスト・ブラッド」になっている。 原題は「Rambo: Last Blood」。 粗筋 ベトナム戦争の退役軍人ジョン・ランボー(シルヴェスター・スタローン)が、ビルマでの戦闘(「ランボー/最後の戦場」)の後、数十年振りに故郷アメリカ・アリゾナ州に戻ってから11年。 父の牧場を引き継いで生計を立てていた。 両親は亡くなっており、身寄りは無く、唯一家族と呼べるのは父の頃からの使用人マリア(アドリアナ・バラッザ)と、その孫娘ガブリエル(イヴェット・モンリール)だった。 そのガブリエルを、ランボーは実の娘同様に可愛がり、大学の学費を負担する事にも同意していた。 進学の為に近々アリゾナを後にする、というある日、ガブリエルが突然切り出す。 メキシコにいる事が分かった実父マヌエルに会いに行きたい、と。友人のギゼルが、見付けてくれたという。 それに対し、ランボーもマリアも反対。マヌエルは、ガブリエルの母親に暴力を振るい、ランボーに半ば追い出された、というのが実情だったからだ。ギゼルも素行は良くなく、信用出来ない。わざわざ会いに行くまでもない、と。 しかし、ガブリエルは、何故実の父親が音信不通になったのか、知りたかった。 ランボーとマリアの説得により、ガブリエルはメキシコ行きを一旦は諦めるものの、実父に会いたいという考えを捨て切れず、一人でメキシコに向かってしまう。 メキシコで、ガブリエルはギゼルと会い、マヌエルのアパートに案内される。 ガブリエルは、漸く実父との再会を果たすが、マヌエルは冷たく言い放つ。お前の母をどうとも想っていなかったし、お前についてもどうとも思っていないから、失せろ、と。 傷心のガブリエルは、気晴らしに、とギゼルに近くのクラブに連れて行かれる。 それから間も無く、ガブリエルがメキシコで失踪した、とマリアがランボーに伝える。 ランボーはメキシコに向かい、ギゼルに事情を聴く。 ギゼルは、クラブでいつの間にかはぐれてしまった、と証言する。ランボーは、それを額面通りに受け入れなかった。何故なら、ギゼルはガブリエルの腕輪を身に着けていたからだ。ランボーがそれについて問うと、ガブリエルがくれた、とギゼルは答える。腕輪はガブリエルの亡き母親の形見だったので、それは有り得ない、と考えたランボーは、ギゼルが失踪に絡んでいると読む。 ランボーは、ギゼルにガブリエルを連れて行ったクラブまで案内させ、そこでガブリエルに近付いていた男エル・フラコを特定させる。 エル・フラッコがガブリエルを誘拐し、人身売買のカルテルに引き渡した事実を突き止めると、ランボーはカルテルのアジトへ向かう。が、そこでカルテルに捕まってしまった。 カルテルを率いるウーゴ(セルヒオ・ペリス=メンチェータ)とビクトル(オスカル・ハエナーダ)のマルティネス兄弟は、ランボーの運転免許証とガブリエルの写真を奪い取り、この女を薬漬けにして売り飛ばす、と宣言する。 ランボーは、マルティネス兄弟の手下らにより暴行を受け、瀕死の状態で放置される。 ジャーナリストで、マルティネス兄弟を追っていたカルメン(パス・ベガ)は、一部始終を目撃していた。ランボーを自宅に連れ帰り、怪我が完治するまで世話をする。 一方、ガブリエルは麻薬を何度も投薬された後、売春宿に売られてしまった。 回復したランボーは、売春宿を襲撃し、ガブリエルを救出し、二人で国境へ向かう。 しかし、越境する直前に、ガブリエルは薬物の過剰摂取で死んでしまう。 ガブリエルを牧場の一角に埋葬したランボーは、復讐を誓う。 マリアを親類の元で身を寄せるよう促して彼女の身の安全を確保した後、ランボーは牧場に様々な罠を仕掛けて準備を整え、メキシコに戻る。 ランボーはビクトルの屋敷に忍び込むと、警備に当たっていた手下らを殺害し、一人残ったビクターを襲撃する。 翌日、ウーゴは、弟の首無し死体を目の当たりにする。 死体の傍には、ガブリエルの写真が添えてあった。 ウーゴは、ランボーに復讐する為、傭兵らを集め、国境を渡る。 ランボーの牧場にやって来たウーゴ一味は、襲撃を開始する。 ランボーは、牧場の地下に掘られたトンネルにウーゴ一味を誘い込む。 トンネルには、ランボーがベトナム戦争で体験した様々な罠が仕掛けられていた。傭兵らは、一人、また一人と罠にはまって致命傷を負い、ランボーに止めを刺される。 生き残りがウーゴただ一人となった時点で、ランボーはトンネルを爆破する。 ウーゴはトンネルから命辛々脱出し、ランボーがいる納屋へと向かう。 ランボーは、弓矢でウーゴを納屋の戸に貼り付けにして身動き出来ないようにすると、相手が生きたまま心臓を抉り出して殺す。 負傷していたランボーは、家のポーチに置かれたロッキングチェアに腰を下ろし、今回の戦いと、過去の戦いを回想する。 感想 10年振りの続編。 ただ、演じているスタローンも70歳。 流石に70歳の老人が国家が絡む陰謀に挑む、という展開のストーリーは無理だと悟ったのか、今回の敵は人身売買を手掛ける犯罪組織という、これまでの戦いからすると小規模なものに。 主人公こそランボーだが、それ以外の登場人物はこれまでのシリーズ作とは全く関係が無い。 主人公をランボーにする必要があったのか、と思わないでもない。 新キャラにしてしまったら、製作の許可が下りなかっただろうが。 舞台がアメリカなので、前作や前々作とは異なり、比較的大人しく始まるが、矢張りランボーとあって、徐々に戦闘モードになり、最終的にはいくらアメリカとはいえこんな事やって大丈夫なのか、という死屍累々の結末に至る。 ランボーに何が何でも戦わせたいが故に、ストーリーはかなり強引。 天涯孤独でどこにも誰にも馴染めない筈のランボーが、牧場主として普通に働いていて、使用人とその孫娘と共に平和的に暮らしている、という姿には違和感を抱く。 ガブリエルは、本作で初めて登場するキャラ。ある日突然「メキシコにいる実父に会いに行く」と言い出して、ランボーらが必死に止めようとするのに一人で行って、悲劇に遭う。その悲劇も、実父に会いに行った事とは無関係で、ただ不運だっただけ。感情移入出来る前に退場するので、戦士としてのランボーを覚醒する為だけに登場する、使い捨てのキャラになってしまった。 メキシコに入ったランボーは、人身売買組織のアジトを早くも掴む。 さあ、どうやってガブリエルを救出するのかと思いきや、アジトへ何の手立ても無く向かって相手に捕まり、マルティネス兄弟の手下に大人しくボコボコにされるという、突っ込みどころ満載の行動。本当にランボーなのか、と疑ってしまう。 マルティネス兄弟に直接会って、「娘を返してほしい」と頼めば、「そうですか。分かりました。返してあげましょう」とでも答えてくれると思っていたのか。 この間の抜けた行動によりガブリエルは目を付けられ、見せしめとして薬漬けにされてしまう。 ランボーはその間意識を失っていたので、何の対応も取れない。 やっと回復してガブリエルを救出した頃には、全て手遅れ。 一番悪いのはマルティネス兄弟に違いないが、ランボーがもう少し慎重な行動を取っていれば、ガブリエルは死なずに済んだのに、と思ってしまう。 観方によっては、ランボーが自身を戦いに追い込む為ガブリエルを死なせた、とも捉えられる。 ウーゴ率いる武装集団が、メキシコ・アメリカの国境を超え、はるばるアリゾナにまでやって来て戦闘を繰り広げる、という展開も映画ならでは。 どうやって国境警備隊の目を掻い潜ったのかの説明はされない。 弟の惨殺死体の横に写真が添えられているのを見て、ランボーの仕業だと知り、アメリカに向かう訳だが、「さっさと来やがれ。待ってるぜ」と言わんばかりの挑発に、馬鹿正直に応えるウーゴの心理も理解し難い。 弟を殺されて冷静な判断が出来なかった、という事かも知れないが、相手が何らかの罠を仕掛けて待ち構えているだろう、くらいの考えは出来なかったのか。考えていたからこそ傭兵を雇い、重武装させ、それで襲撃すれば充分と判断したのか。 この程度の頭脳しか持たない輩が、人身売買のカルテルなんてよく切り盛り出来たな、と思う。この程度の頭脳しか持たないからこそ、人身売買のカルテルで一儲けしよう、と考えたのかも知れないが。 作中で、マヌエルとギゼルを、ランボーとマリアは悪人呼ばわりしていたが……。 ギゼルはガブリエルの腕輪欲しさにエル・フラッコに彼女を売り渡した様だが、それでもガブリエルが失踪した、とマリアに報告している。 この報告が無かったら、ランボーはガブリエルを見付けられなかっただろう。 ギゼルは善人ではないが、救いようのない悪人でもない。 同様の事は、マヌエルにも言える。 マヌエルは、実の娘を冷たくあしらうが、娘を嫌っていたというより、「折角アメリカで幸せに暮らしているんだから、こんな所に来るな」と心を鬼にして追い払ったのではないか。 これが親として娘に出来る最後の事だと。 そうでもなければ、顔を合わせた時点で「綺麗になったな。お前の母親を思い出す」なんて事は言わない筈。 ガブリエルが別れた後そのまま寄り道せずアメリカに戻らなかった事に、ショックを受けていた可能性もある。 単純過ぎるくらい単純なストーリー展開なので、上映時間も結構短い(劇場公開版は89分)。 シリーズの中では最短かも知れない。 もう一捻りしてランボー対マルティネス兄弟の戦いを引き延ばせなかったのか。 メキシコは、犯罪が横行していて、様々な社会問題が横行しているのは事実だが、たった一度の訪問で犯罪に巻き込まれてしまう程の危険地域でもなかろう。 「メキシコ=犯罪国家」のステレオタイプに囚われ過ぎなのでは、と思わないでもない。 それを言ったら、アメリカだって犯罪者だらけの国に見えてしまう。 「ファースト・ブラッド」の原作者デビッド・マレルは、本作には批判的。 マレルは、映画版第2弾では、ノベライズを手掛けているので、自作の映画シリーズ化には否定的ではなかった筈だが、流石に自身の手を完全に離れた状態で続編が次々作られ、その度に本人の名が掲げられる事には納得がいかないらしい(原作の小説では、ランボーは最後に死ぬので、映画が原作に忠実だったらそもそもシリーズ化はされない筈だった)。 マレルはその後も小説を発表しているが、結局「ランボーの原作者」と紹介されてしまう。 まさかこんな事になるとは、と映画化を了承した事を悔やんでいるとしか言い様が無い。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.07.01 20:30:32
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