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テーマ:憲法議論(165)
カテゴリ:憲法
《天皇は…一個の單なる生理的人物、卽(すなわ)ち自然人としての天皇ではなく、長き傳統(でんとう)過程に於て構成され來つた民族の心と心との社會(しゃかい)的連關(れんかん)に於ける相互作用の結果として發達してきた民族の一體(いったい)的生活關係窮極の統制力所有者としての天皇である》(里見岸雄『天皇の科学的研究』(里見研究所出版部):第4章 天皇の文化的機能:2 象徴としての天皇、p. 191)
《天皇陛下萬歲(ばんざい)を唱へるのも、天皇陛下の爲には一死をも厭(いと)はぬといふのも、天皇の軍隊、天皇の政治等といふのも、みなこの基礎の上に成立するのであって、「天皇」はあきらかに民族それ自身の統一的中心的最高象徵である。然(しか)して、それはAとかBとかいふ特殊の個人と、ある個人としての天皇との具體的な直接關係によって叫ばれるものではないのである》(同) 保守派憲法学者の大石義雄は、象徴天皇は専(もっぱ)ら「精神的存在性格」だと言う。 《象徴とは、観念的存在を具体化する標識物または人格をいう。国家は観念的存在である。けだし、国家は過去現在未来につながる民族の生命を内容とするものだからである。この国家という観念的存在を具体化するものが国家の象徴である。それ故に、 (1)天皇が日本国の象徴であるとは、天皇という特定人格者は、対外的に日本国という観念的存在を具体化するものだということである。 (2)また、天皇が日本国民統合の象徴であるとは、天皇という特定の人格者は、対内的に日本国民の統合の状態を具体化するものだということである。 この意味において、天皇が国家の象徴であるということは、憲法の定めたことであるから、憲法上の地位である。このことは何を意味するかといえば、何人も天皇を国の象徴と認めなければならないということである。それは、憲法という法の要求であって、道徳的あるいは宗教的地位ではないのである。 国の象徴は独り天皇にかぎらない。国旗もそうである。国旗は、物による国の象徴である。天皇は、人格による国の象徴である。しかし、この天皇の象徴性の内容は精神的なものであり、国威の政治的意思を総括的に表現するという意味を持つものではない。すなわち、日本国憲法の定めた天皇の象徴性は、天皇が国家統治権の総覧者たることを意味するものではない。それ故に、天皇が国の象徴であり、また国民統合の象徴であるということは、政治的に国民を統合するということを意味するものではない。すなわち、天皇は国権の総携者として国家活動をなすことを意味するものではない。もっぱら、精神的存在性格であることを示すものである》(大石義雄『改訂 憲法講義』(有信堂)、pp. 220-222)
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Last updated
2022.02.25 21:00:07
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