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テーマ:ニュース(100198)
カテゴリ:人生を学ぶ
2011.10.16 毎日新聞が標記の記事を掲載しておりましたのでご紹介いたします。
「From60:元三重県鳥羽市立図書館司書・山本実さん/愛知 毎日新聞 10月16日 <東海地方にゆかりのある、シニア世代の皆さんのページです> ◇将来に残す共有財産 郷土資料を目録化「整理しなければ紙切れに」--山本実さん(62) 「文書や資料に張り付いたシミみたい」。 三重県鳥羽市大明東町の市立図書館の一室で、山本実さん(62)=同市幸丘=は自身をこう表して笑った。部屋には行政文書や刊行物、写真などの郷土資料が山のようにそびえる。 一つずつ点検しながら目録化する無償の“仕事”を始めて4年目を迎えた。 市合併前の1町6村の行政資料1万500点を整理分類するなど着々と成果は上がっている。 「文書、資料を餌にして新しい価値を生み出すシミになりたい」 と願う山本さんだ。 山本さんは、伊勢志摩観光の中心地、鳥羽市の農水商工観光課長(当時)を最後に58歳で退職した。退職前の10年間は、中枢部の企画と商工観光行政に携わった。 誠実な人柄と幅広い人脈を見込んだ観光産業関係者から再就職話が持ち込まれたが、体調不良を理由に断った。実際、1年間を自宅療養にあてざるを得なかった。 療養中、脳裏をよぎり続けていたのが「やり残した仕事」のことだった。山本さんは市職員に採用されてから29年間、図書館に勤めた。収集したり、持ち込まれた膨大な郷土資料が山積みのまま残されていた。 代々漁業に従事してきた山本家にあって、長男として後継ぎを期待された。 だが「泳げない、潜れない、船に酔う」ため、家督を弟に譲り、高校を卒業後は市職員となった。 ◇ ◇ ◇ 小さな市の小さな図書館は、山本さんと館長で切り盛りした。 雑務から書架の整理まで何でもこなした。全国で発刊される書籍は年間4、5万冊。 購入可能な1000冊の本選びに「胸躍るスリリングな毎日」だった。 図書館司書の資格を取り業務に慣れたころ、山本さんの前に立ちはだかったのが郷土資料の整理だった。 「本ならば金さえあればそろえられるけど、郷土資料は自分たち自身で整理しなければ、紙切れのまま散逸してしまう」。 戦国武将で鳥羽城を築いた九鬼嘉隆を知らない市民はいないが、その生涯は分からないところが多く、「謎の武将」と言われる。嘉隆に関する資料は地元にほとんどなく、 「詳しく知ろうとすれば、東京の大学か図書館に出かけなければならない」 のが実情だ。 ◇ ◇ ◇ 元気を取り戻した山本さんの格闘が始まった。最初に手がけたのが、合併した旧町村役場の文書の目録化だ。 明治21(1888)年の市町村制以降、市が誕生した1954年までの、鳥羽町や加茂村などの行政文書1万500点を整理し、「鳥羽市『旧町村役場』文書目録第1集」としてまとめた。 山本さんが興味深い資料としてあげたのが、旧菅島村役場の「大正十年 社会事業 菅嶋村役場」と題した文書だ。 国から照会を受けた民衆娯楽に関する2件の調査で、島内で催された弓祭りや天王祭の村芝居、盆踊りなどが子細に書き込まれていた。 娯楽の中心だった村芝居では「忠臣蔵 由良之助おかるを身受セントスル場(八段目)」(仮名手本忠臣蔵)などが上演され、人気を呼んだ。 調査の背景を探ってみると、興味深い事実に行き当たる。 山本さんの目録を基に三重県の県史編さんグループが調べたところ、疲弊した農村部で小作争議が相次ぎ、娯楽によって農村を治めようとした時の政府の思惑があった。 民衆の娯楽調査を基に施策を講じようとしたが、調査結果は関東大震災によって消失した。 旧菅島村役場の文書は、調査内容や娯楽の実態ばかりか、当時の政治情勢をも今に伝える貴重な資料ということが判明した。 山本さんは行政文書を目録化していて強く思った。 「現状は、書類の保存年限が定められ機械的に廃棄されていく。だが、行政文書は近現代史の研究や地域史、民衆史の調査に不可欠な歴史資料であり、将来に伝え残すべき共有財産であるべきもの」 なのだと。そして 「資料の収集、整理、目録化、保存、そして利用というサイクルをぜひとも確立したい。その日をこの目で確かめるまでは“仕事”を終えられない」 と話す。<ペンとカメラ、林一茂 60歳> ◇メモ 資料の整理が大好きという山本さんは平日、6~7時間ほど鳥羽市立図書館の資料室に詰める。 旧町村役場の文書のほか、江戸末から明治、大正にかけて鳥羽の商業、流通史や芸能活動を伝える「扇屋酒店資料」約4500点 ▽明治以降、鳥羽・志摩について書かれた論文や書籍約6000点--の目録化を進めている。 その後、初代鳥羽町長を父に持ち、宝塚音楽学校長で参議院議員だった故須藤五郎氏の遺族が寄贈した自筆楽譜や作曲家としての活動資料約40箱をはじめ、膨大な量の整理が待ち受けている。 ……………………………………………………………………………………………………… From60編集室 〒460-8351(住所不要) ファクス 052・324・7415 メール from60@mainichi.co.jp 10月16日朝刊 」 2011/10/16記録。 あしま お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019.09.16 12:21:32
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